橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
25.コウモリ
明くる日も、私は体温計を逆さに振る方法で学校を休んだ。佐藤先生が家庭訪問に来たときは、屋根裏に逃れた。そのまま屋根裏で夕方まで過ごした。屋根裏で私は一つの慰めを見つけた。それはコウモリと仲良しになることだった。屋根裏にはたくさんのコウモリが住み着いていた。私がそのことに気付いたのはコウモリの巣を見つけたからだ。
それは軒先に近い梁の下にあった。昼間彼らは屋根裏のうっすらとした暗がりのなかでひっそりと眠っている。私が近づいても無警戒で逃げようともしない。そうしたコウモリの巣があちこちにあることに気付いて、最初は気味が悪かったが、やがて彼らに愛着を覚えるようになった。
懐中電灯で照らすと、その顔はネズミと猿の合いの子だった。大きな耳と小さな目を持ち、愛嬌のある利口そうな表情をしている。なるほど彼らが鳥類ではなく獣の仲間だということが分かった。彼らを眺めていると、私はしばらく自分の孤独を忘れることができた。
(君たちはいいね。学校に行かなくてもいいし、大人になってもあくせく働く必要はないんだものね。昼間はこうして静かに眠っていて、夜が来ると超音波のレーダーを使って自由に空を飛び回って好物の虫を食べるんだろう。夜だから外敵に襲われることもないだろうし、風邪を引いたり、ノイローゼになったりすることもないしね。おや、君は欠伸をしたのかい。睡眠妨害したりして悪かったね)
夕方辺りが暗くなるのを待って、彼らは次々と空に飛び立っていく。一人とり残された私は、淋しくなった。彼らと一緒に飛んでいけないのが残念だった。
その翌日も私は学校を休んた。私は家族と顔と合わせるのを避けて、終日コウモリ相手に暇をつぶした。ところがそうしているうちに、私の体に異変が起きた。頭痛と悪寒がしきりにした。喉がひりひりと痛み、額が燃えるように熱くなってきた。仮病を装っているうちに、私は本物の病気になったようだ。
|