橋本裕の日記
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24.惨めな体験
家に心なしかわびしい明かりがともっていた。私は玄関口から足音を忍ばせて梯子段を上がり、屋根裏に辿り着いた。そこはまったくの闇の世界だった。心の慰めになるような事物の影も消えて、私の心はよりどころを失った。
何時間もそうしてうずくまっていた。やがて生理的欲求が募ってきた。私は再びトイレに行くためにそこを降りた。居間を覗くと父と母が話し合っている。引き返そうか迷っているうちに欲求が切迫してきた。私は小走りに居間を横切ってトイレに駆け込んだ。きわどいタイミングで用を足すことができた。
トイレを出たところで、父に捕まった。早速父から尋問された。数カ月前まで刑事をしていた父はさすがに迫力があった。 「お前は何を取ったんだ」 父の言葉に、反発を覚えた。
「何も取っていない。貰って食べたんだ」 「貰って食べるような奴は、余計に情けない」 父は福井署に顔なじみの警察官がいた。それだけに息子の不祥事は辛い体験だったのだろう。私は惨めな気持ちになってうな垂れた。
父は厳しい目を母にも向けた、 「小浜から帰ってきたときに、田舎へ行っていればこんなことにならなかった。お前は一日家にいて何をしていたんだ」
母も私の横で首をうな垂れている。祖母も座敷の隅に来て正座していた。家の中がお通夜のように静かになって、裏庭の虫の声だけが聞こえてきた。
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