橋本裕の日記
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秋らしい好天気が続いている。昨日は昼頃、妻を誘って木曽川の堤を歩いた。河原にところどころ曼珠沙華が深紅の彩りを添えていて、じっと見つめていると、何か異境に来たような錯覚に捉えられた。
地面からまっすぐ立った赤い異形の花々が、地から生えた無数の人の手のようにも見えた。その手が苦悶の形をして何かを訴えている。
曼珠沙華むらがり生えて何さけぶ異界風吹くすすきの河原
河原を歩いているうちに、やがてその光景にも慣れて、秋の日差しで汗ばんだ肌にふきつける風が快い。せせらぎの音、風になびく草や木々小鳥の囀りが私たちを爽やかに包み、足下からはバッタが飛び立ち、赤トンボがすすきの上をすいすいと流れて行く。青空が心にしみてきた。
河原を歩いた後、街に戻ると、どこからか金木犀の甘い匂いがしてきた。
街角を曲がれば匂う金木犀信号待ちの少女がひとり
平和な日本に暮らしていると、この平和のありがたさが分からなくなる。豊かな日本に暮らしていると、この豊かさのありがたさに鈍感になる。世界には大勢の飢えた人々がいて、今も戦争で家族を失ったり傷ついた人たちがいる。1億人以上の子供たちが学校に行けないでいる。そんなことを考えているうちに、「どこかの街角で」という詩ができた。
どこかの街角で 木犀が薫っている
どこかの街角で 少女が信号待ちをしている
どこかの街角で 少年がひもじい腹をかかえて 父親の帰りを待っている
どこかの街角で 母親が飢えた赤ん坊をあやしている
どこかの街角で 足のない男が死んでいて 蟻が一匹 蝶々の羽を運んでいる
どこかの街角で ピアノが閑かに鳴っている
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