橋本裕の日記
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2003年10月05日(日) どこかの街角で

 秋らしい好天気が続いている。昨日は昼頃、妻を誘って木曽川の堤を歩いた。河原にところどころ曼珠沙華が深紅の彩りを添えていて、じっと見つめていると、何か異境に来たような錯覚に捉えられた。

 地面からまっすぐ立った赤い異形の花々が、地から生えた無数の人の手のようにも見えた。その手が苦悶の形をして何かを訴えている。

  曼珠沙華むらがり生えて何さけぶ異界風吹くすすきの河原

 河原を歩いているうちに、やがてその光景にも慣れて、秋の日差しで汗ばんだ肌にふきつける風が快い。せせらぎの音、風になびく草や木々小鳥の囀りが私たちを爽やかに包み、足下からはバッタが飛び立ち、赤トンボがすすきの上をすいすいと流れて行く。青空が心にしみてきた。

 河原を歩いた後、街に戻ると、どこからか金木犀の甘い匂いがしてきた。

  街角を曲がれば匂う金木犀信号待ちの少女がひとり  

 平和な日本に暮らしていると、この平和のありがたさが分からなくなる。豊かな日本に暮らしていると、この豊かさのありがたさに鈍感になる。世界には大勢の飢えた人々がいて、今も戦争で家族を失ったり傷ついた人たちがいる。1億人以上の子供たちが学校に行けないでいる。そんなことを考えているうちに、「どこかの街角で」という詩ができた。

  どこかの街角で
  木犀が薫っている

  どこかの街角で
  少女が信号待ちをしている

  どこかの街角で
  少年がひもじい腹をかかえて
  父親の帰りを待っている

  どこかの街角で
  母親が飢えた赤ん坊をあやしている

  どこかの街角で
  足のない男が死んでいて
  蟻が一匹
  蝶々の羽を運んでいる

  どこかの街角で
  ピアノが閑かに鳴っている


橋本裕 |MAILHomePage

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