橋本裕の日記
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人間だれしも50歳という私くらいの年齢になると、おおよそ人生観もかたまり、人生の座標軸も定まってくるのではないだろうか。孔子の有名な言葉を引けば、「天命を知る」ということだろう。
座標軸を決める場合、大切なのは「原点」であろう。原点とは、「人生の理想・目標」と言い換えてもよい。この原点を何にするか、あるいは誰にするかということで、人それぞれの人生観が築かれ、人生のスタイルも変わってくる。
北さんなら、「楢山節考」を書いた深沢七朗だろうし、tenseiさんなら、「トルストイ民話集」や聖書が人生のバイブルだと言うかも知れない。私の場合は「万葉集」である。もしくは「万葉集」をこよなく愛した「良寛」が人生の原点だと答えるだろう。
良寛が好きだという人は多い。本もたくさん出ている。作家の中野孝次さんも良寛を賛美する知識人の一人で、良寛の本を書いてベストセラーになったことがあるが、よく考えてみると、名利を求めず「一隅を照らす」清貧そのものの人生を生きた良寛のことを絶賛しながら、自らは印税を稼いで金持ちになり、有名になるというのは一つの矛盾であろう。
この事について、中野さんは「私はとても良寛のようには生きられない。良寛はあくまでも理想の人であり、あこがれの人である。その徳の深さにおいても、とても良寛の足下に及ばないが、大切なのは、そうした人生の座標軸を持ち、原点を持つことである」という意味のことを述べていた。
書店で立ち読みしただけで、本の題名も覚えていないが、「なるほど、さすが流行作家はうまいことかくものだなあ」と感心したものである。しかし、あくまで理想・目標であって、現実の自分とは違うというだけでは、単なる開き直りとしか思えない。大切なことは、そうした原点を見失わず、少しでも自分の人生をその理想の生き方に近づけようと努力することであろう。
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