橋本裕の日記
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17.発覚 運動会も終わり、秋の気配が深まりだした頃だった。その日朝礼の後大掃除があって、私はおなじ班の数人の仲間と校舎の陰で草取りをしていた。そこへ、担任の佐藤先生が苦々しい表情でやってきた。見ると先生の傍らに茂夫が肩を落として立っている。
私は茂夫と目を合わせて、すべてを了解した。恐れていたことがやってきたのだ。六月の万引き事件が発覚したに違いない。私は先生に促されて立ち上がった。一緒に草を取っていた少年たちがいぶかしそうに私を見た。
「お前は何を取ったんだ」 佐藤先生は職員室の方に歩きながら私に訊いた。 (何も取っていない) 私は心の中でつぶやいた。先生の口調に反発を覚えたが、茂夫の手前、口に出すことは控えた。 「隠しても無駄だぞ」 先生は私の無言を別な風に受け取ったようだった。
職員室の前まで来ると、先生は私たちを廊下に残して中に入った。そしてなかなか出てこなかった。廊下を行く同級生たちが不審そうに私たちを眺めて通り過ぎて行く。チャイムが鳴り、掃除の時間も終わって生徒達の姿はなくなったが、今度は教室に移動する先生方の視線に晒されることになった。
ようやく職員室から出てきた佐藤先生は、 「教室へ行って来るから、もうしばらく待っていなさい」 そう言い残して再び去って行った。 先生は不機嫌な様子だった。それ以上に、愕然としていた。
茂夫は時々私の顔を見たが、私が思い詰めたような表情をしていたせいか、言葉をかけるのを躊躇しているようだった。実際声をかけられても、私は茂夫と口をきく気分ではなかった。 やがて廊下の反対側に先生の姿が現れた。
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