橋本裕の日記
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2003年09月19日(金) こうもりの空

14.雀取り

 私が小学生の頃に流行っていたものに、パチンコがある。ゴムで小石を飛ばして雀を取るおもちゃだ。雀にとっては迷惑な代物だ。今はこんな野蛮な遊びを動物愛護協会が許すわけがないが、当時はまだそんな観念が薄かった。

 もっとも、私の経験では一度も雀に当たったことがない。これは私の腕が下手なばかりではなく、この投石器の限界でもあったのだろう。雀のような小さくてすばしっこい生き物を、こういう精度の悪い道具で狙っても無理だ。たとえまぐれで当たっても、飛ぶのは小豆程の小石なので、雀も致命的な痛手を負うことはない。そのまま逃げられる公算が大きい。

 そんなわけで私はパチンコを諦めて、盥を使う方法に切り替えた。盥をひものついたつっかい棒で持ち上げて、地面にパン屑を撒いておく。雀が餌を求めて入り込んだところでひもを引けば、盥が落ちて雀を生け捕りにできる。実際この方法で私は雀をとらえた。しかし残念なことに、雀を盥の中から取り出すのに失敗して、雀は再び空へ帰って行った。

 私の失敗を見透かしてでもいたかのように、夏休みのある日、父は私を雀狩りに誘った。見ると父の手には空気銃が握られていた。
 朝早く、父と私は郊外へ出かけた。途中の空き地で二人で交代で射撃訓練をした。十メートルほど離れたところに空き缶を置いて撃ったが、私も何発か命中させることができた。これなら雀にも当たりそうだ。

 実際、雀は面白いように捕れて、南京袋が手負いの雀達で一杯になった。私も四、五羽は捕った。こんなに面白い経験をするのは久しぶりだった。南京袋の中では雀達が盛んに羽を羽ばたかせ、チュンチュク合唱している。

 ところが途中で私はとらえた雀を袋に入れようとして、誤って袋の口を逆さまにしてしまった。このため雀たちは地面に落ち、元気の残っていた雀達はあっという間に飛び立った。そして私の足元には死にかけた血まみれの雀だけが残された。


橋本裕 |MAILHomePage

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