橋本裕の日記
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2003年09月17日(水) 対話は真理への道か

 今年6月にフランスで実施されたバカロレア(大学入試資格試験)の哲学の問題に「対話は真理への道か」があったそうだ。これは社会科学系で出た問題だが、文学系では「全面的自由という観念に意味はあるか」、理系では「自己を意識することは、自分に対して他者となることか」などの設問があった。

 受験生は4時間という制限時間のなかで、こうしたテーマについてについて論文を書くわけだ。フランスの高校生は哲学は必修科目で、ふつう3年生の時に学ぶが、哲学はすべての学問の集大成という位置づけを与えられていて、バカロレアでも点数配分が一番高い。たとえば文系のコースだと、哲学の点数は獲得点×5で計上される。理系でも獲得点×3と、哲学は軽視されていない。

 今年の出題について、国民教育大臣で哲学者でもあるリュック・フェリー氏は「とてもよい出題。対話は真理へ至るための条件の一つだ」とコメントしたという。フランスでは教員組合と政府の対立が続いており、そうした中でのバカロレアだったので、とくに「対話は真理への道か」という出題は評判を呼んだようだ。

 哲学で高得点を得るためには、様々な時代の哲学者の思想について知識を持っていて、それらから自由に引用し、比較検討することができなければいけない。そしてさらにその上で、自説を構築し、論拠をあきらかにし、論理的かつ総合的な視点から展開しなければならない。高校生にとってこれはなかなかの難事だが、こうした知性の訓練を若いうちに経験しておくことはとても有益だろう。

 哲学と並んで重視されるのは数学で、たとえば文科系でもその傾斜配点は獲得点×4とかなり高い。これももちろん、日本のセンター入試のような機械的な計算問題ではなく、じっくりと考えさせる論述問題が中心である。理科系の数学問題のレベルは、日本の大学入試問題と比べてもかなり難しいようだ。

 国語(フランス語)についてももちろん重視されている。 これは高校2年生のときに受験するしくみだが、筆記と口述試験がある。口述試験は試験官一人に生徒一人のマンツーマンで行われる。試験官から問題を受け取ったら、20分間構想を練る時間が与えられ、その後、20分間プレゼンターションをする。試験管から与えられた文学作品のテキストについて、徹底的に解析することが求めれる。作者の思想や人生観、その時代背景などについても幅広く論じる力量が要求される。
 
<ここで重要なのは全てが論文形式であると言うこと。アメリカのSATや日本の受験のように選択式問題は存在しない。数学でさえ、長い説明文を付けなければ、全問正解でも平均点以上はもらえない仕組みになっている。この論文形式の試験は非常に学生のためになると思う。まず、文章を書くということに慣れる。構成力、思考力が鍛えられるし、何よりも自分の意見を主張するということを学ぶ。勉強で得た知識に対し、自らの見解を与えることが出来る。当時、高校生だった私は、自分の意見を採点する教師にどう捕らえてもらえるかワクワクしながら執筆していた。採点する側にとっては多大な労力を要するが、論文方式の試験は是非日本でも取り入れるべきだと思う>

 これはバカロレアを経験した日本人学生の感想だが、私も大学入試問題は数学も含めて論述形式の試験を実施すべきではないかと思っている。文章を書くことで、思考が精密になる。ただ知識を蓄積するだけではなく、それをいかに活用するかというが肝心である。現在のところ、知識はただ大学入試のためにのみ活用されるだけだが、これでは宝の持ち腐れであろう。

(参考サイト)  http://www.asahi-net.or.jp/~VR3K-KKH/europeletter
          /europetop/france/3baccaloreat.htm


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