橋本裕の日記
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13.新しい夢
夏休みに入って、朝起きて学校へ行かなくてもいいと思うとほっとした。それだけ、学校が面白くなかった。
二階の廊下の窓から、手作りの自動車がブリキを張ったまま裏庭に放置されてあるのが見えた。それは夢の残骸であり、万引きという忌まわしい記憶の原点だった。 (早いところ始末してしまおう) 庭に出ると、釘抜きを使ってブリキをはがした。それから鋸と鉈で残りを解体した。
あれほど苦労して作ったものが、三束の薪になった。その薪も風呂釜の焚き付けにされて燃やされた。ブリキ板を屑屋に持って行くと、百円玉を出したが、私はそれを四人で分ける面倒を考えて受け取らなかった。私はいやな記憶からいくらか自由になった。
私は夏休みの課題作文にエジソンの伝記を選んた。この本で彼がまともな学校教育を受けていないにも関わらず様々な発明をしたことを知った。私は近所の模型店へ足を向けた。私もエジソンにあやかって、夏休みの自由課題で何か面白い発明品を作ってみたいと思った。
店は家と同じ並びにあり、おばさんが店番をしていた。私はこれまでにマグネットや豆電球、ベル、ニクロム線などを買っていた。店先に並んでいる電気仕掛けの模型を眺めているだけでも楽しかった。
模型店から帰ってくると小浜の小学校で担任をしていただいた柿谷先生が待っていた。福井大学で教員の研修会があり、その帰りだという。私は先生からその後のクラスの様子を聞いた。先生は福井の小学校での私の成績を訊き、通知表や教科書を見せるように言った。
残念ながら、5はなかった。理科と家庭が4で、あとは2と3ばかりである。先生は教科書を眺めながら、 「活字の大きさが違っているね。しっかりがんばるんだぞ」 「はい」 成績はぱっとしないものの、先生は私の顔を見て安心したようだ。そして、母の運んできた氷イチゴやところてんをうまそうに食べた。
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