橋本裕の日記
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| 2002年02月14日(木) |
悪問だらけの大学入試 |
河合塾教育本部長をしていた丹羽健夫さんの「悪問だらけの大学入試」という本を買って読んだ。丹羽さんが所長をする全国進学情報センターでは、塾や高校の先生方の協力を得て、毎年入試問題の検討会を催しているという。
悪問は英語、国語、数学、理科、社会と、教科を問わず毎年出題されているが、最近とくに多くなってきた。悪問とは、高校の指導要領の範囲を逸脱し、常識的に言ってあきらかに大学入試にふさわしくないものである。たとえば日本史の問題で次のようなものが出題された。
�� 栄西により日本茶が中国からもたらされたのは西暦何年か。 �� 栄西のもたらした茶の製法の最初の工程は何か。 �� 問�△旅�程の次に行われる製茶の工程は何か。 �� 栄西のもたらした茶の種類は何か。 �� 古い茶の産地の宇治は京都のどの方向にあるか。 �� 栄西が京都に建立した寺は何寺か。
これはある私立大学の国際・コミュニケーション学部の試験だという。日本史の問題では、日本本土初空襲の爆撃隊機の指揮官(アメリカ人)の名前、そのときの飛行機の機種の名前、また爆撃機が発進したアメリカの基地の名前を問うような問題もある。いずれの問題も、一般の高校生には全問解答不可能といってよい。出題者の常識が疑われる。
「大学入試問題が断片的な知識のみを要求したとするならば、日本中の教育現場は知識詰め込み道場と化すだろう。逆に思考力、創造力を求める問題が多く出るならば、現場の教育はそれに対応するであろう。また、教育課程を無視した問題が出されるならば、教師は混乱し、生徒は学校の授業を信頼しなくなるであろう」
ちなみに悪問が最も多く出された大学は、早稲田と慶応だという。そこでとくに問題点の多かった慶応大学には次のような公開質問状をだした。
「・・・例をあげましょう。日本史で申しますと、文学部の二番の問題、歴代の陸軍大臣海軍大臣を5名ずつ挙げて年代順を問う問題。・・・受験生はびっくりし、多くは落胆したに違いありません。・・・この手の問題は例えば商学部の地理第二問のように、日本史以外にも多く出されています。また地理歴史のみならず英語でもみられます。・・・慶応大学では入学試験問題作成にあたって、高等学校の教育課程を研究し、それにもとづいて出題がなされているのでしょうか」
慶応大学からは、さっそく「この度のようなご指摘に対して、本大学は真摯に受け止めております。今後とも貴重なご意見などを頂戴できれば幸いです」という回答がよせられ、翌年からは改善が見られたという。しかし、大学によっては、悪問指摘に対して、明らかに意地になってさらなる悪問を投じてきた大学もあったという。
それではなぜこのような受験生に苦痛と落胆を与え、教育現場を混乱させるような悪問が頻出するのか。それは91年の大学審議会の答申により、ほとんどの大学から教養部が姿を消して行ったことがある。つまり、問題作成が、高校教育課程にはほとんど素人の、問題作りに乗り気のない特定分野の専門家の手に委ねられることになった。さらに、入試の多様化・複線化で問題作成の負担が増えた。出題担当をみんながいやがり、出題者の決定に難航する大学も少なくないらしい。
そこで、2000年の春、河合塾はみかねて「大学入試の作成を請け負います」というアナウンスをしたのだという。これに対して文部大臣が緊急記者会見を開き、「機密漏洩」の観点から望ましくないという意味のことを語った。いかにも文部省らしい口先だけの建前論である。
しかし、大学の反応は好意的で、相当数の依頼があるという。最近では代々木ゼミも請負業務をはじめたようで、これから受験産業が入試問題をつくるのが当たり前の時代がくるのだろう。彼らは受験のプロだから、悪問や奇問も少なくなり、受験生も安心して塾に通うことができる。私たち現場の教師も安堵する。しかし、何だかおかしいとは思いませんか。
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