橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
| 2002年01月24日(木) |
過剰が貧困と戦争を生む |
「何故戦争は起こるのか」という問いに、「人口論」を著したマルサス(1766-1834)なら、「過剰な人口」が原因だと答えるだろう。人口の増加に生産の増加が追いつかない。したがって、需要に対して供給の絶対量が不足する。そこで、限られた資源やモノの奪い合いが起こる。
戦争によって、殺し合いが行われ、人口が減ると、生産力と需要が均衡し、平和が訪れる。しかしやがてまた人口の幾何級数的な増加が始まり、供給が追いつかなくなる。そこで再び人口調節の必要が起こり、戦争がはじまる。このサイクルが続く。人口調節のメカニズムとして、戦争の他に飢饉や疫病の流行があるが、戦争はより人為的であり、文明的であるといえる。
こうしたマルサスの考え方は、ダーウインの「適者生存説」やマルクスの「階級闘争の理論」に受け継がれた。いずれも貧乏や欠如から闘争が生じるという考え方である。現在の学者や政治家も大方はこうした枠組みでものを考えている。だから、戦争をなくすためには、生産力を高め、世界が豊かになればよいと考える。
しかし、戦争の原因を「貧困」に求めるのは一面的である。私はむしろ「生産性の増大」こそが戦争のほんとうの原因だと考えたい。生産性の増大による生産過剰、供給過剰がもとにあって、人々はそのはけ口を戦争に求める。昨日も書いたように、これが戦争の本質的原因ではないだろうか。つまるところ、「貧困」でさえも「過剰」の産物なのである。
1920年代にアメリカの生産性は飛躍的に伸びた。フォード式の大量生産システムが完成したからだ。しかしこの生産性の向上が、やがて需要と供給のミスマッチを生み、世界恐慌を引き起こした。不況や貧困という現象面の背後にある本質が「過剰生産」だということがわかる。
そして、生産過剰の背後にあるのは、生産性の増大であり、科学の発達である。つまり、科学的文明の発達が戦争を生むという、皮肉なことになった。20世紀はまさに過剰による貧困と飢餓と戦争の横行する時代だった。
21世紀はどうだろう。私たちが生産力や効率という近代的概念の呪縛に縛られて、そうした生産至上主義、利潤至上主義の生き方や考え方を変えない限り、過剰による飢餓と戦争の世紀は続くだろう。おそらく、人類滅亡のそのときまで・・・。
(参考サイト) マルサスと人口・政治経済学 http://f50.josai.ac.jp/~ishi/ronbun1.html
|