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2004年11月22日(月) 以前に書いた、馬場についてのちゃんとした文章

「出身どこ?」飲み会や合コンでしばしば繰り出されるこの質問ほど、辛いものはありません。私の実家がある埼玉北部は、はっきり申し上げて、何ひとつ特徴がないのです。最寄り駅を言っても鉄道マニアの方しか分からないし、どうせ会話も続かないし……と悩んだ末、「東京です」と嘘をつくこともしばしばです。
 


そんなわけで今回は、大好きで住み着いている新しい郷土「高田馬場」をご紹介することにしました。実はたくさん隠れていらっしゃるという埼玉県民の方、郷土を捨てた(?)私を温かく見守ってください。



私が高田馬場を好きな理由は、大学4年間という鬱屈して多感な、失恋ばかりを繰り返した微妙な時期を、ここで過ごしたことと深く関わっています。毎日、会社帰りに駅を降りると、深夜の早稲田通りには酔っぱらって寝転がったり、寄り集まって大声を上げている学生たちの姿をたくさん見ます。彼らの訳の分からない、やり場がなくあふれ出てしまったパワーを眺めるたび、「ああ、ああいう時代が自分にもあったなあ」と甘酸っぱい気持ちが胸にわきあがります。高田馬場には、こうしたいつまでも学生気分を許してくれる温かい空気が満ちあふれていて、簡単には涙を流せない、大声で叫べない「社会人」になってしまった自分を、ふっと立ち止まらせてくれるのです。



先日、とても残念なことがありました。早稲田通り沿いにあった「レッドピーマン」という定食屋さんが店をたたんでしまったことです。ここは、村上春樹『ノルウェイの森』にも登場した知る人ぞ知る名店でした。手作りのハンバーグやフライなど、正統派の洋食を700円ほどで食べられるので、サークル帰りの学生や仕事帰りのおじさんたちが、ビール片手に語り合う姿がよく見られました。最近ではチェーンの定食屋に押されつつありますが、早稲田通り沿いには、「レッピー」に代表されるような、安くておいしい、昔からのお店がたくさんあります。遊びに来た友達には「食べ物屋ばっかりだよね」とよく言われますが、私は誉め言葉と受け取っています。



もうひとつの馬場の特徴といえば、やはり古書店街でしょう。駅から早稲田大学までの1本道には、人文系から外国文学、美術書まで、専門の古書を積み上げた薄暗い店が並びます。私は古本マニアではないので、ワゴンを覗いて100円もしない本をあさるくらいのものですが(神保町より相場は安いそうですよ)、年に数回ある「青空古本市」は楽しみに出かけます。会場の穴八幡(神社)に、サンダル履きのおじさんや近所の子どもたち、金髪の学生まであらゆる人々が繰り出して、それぞれの1冊を探していく。そんな休日の風景を眺めていると、「この街に住んでよかったな」という気持ちが満ちてきます。



にぎわう新宿と上品な目白にはさまれた場所に、こんなにあか抜けない街が今なお存在することを、たまに思い出していただけたらと思います。神田川の満開の桜は本当に素晴らしいので、春になったらいらしてください。ごちゃごちゃして汚くて、少しもエッジじゃないのになぜか愛しい、不思議な馬場の魅力。一度はまったら、私のように抜け出せなくなりますよ。おほほ。
 


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