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2004年10月03日(日) SELF AND OTHERS

前略 王子様



私は目標がある場合には全力で頑張るほうだし諦めも悪いし、執念深いし望んだことは強く望めば必ず手に入るのだと固く信じているし、今までそうした努力の末に勝ち取ってきたものもたくさんあるから、ある理想や夢についてはかなうというある程度の自信と楽観的観測のもとに動く人だけれど、いいかげん全く現れそうにないあなたについては少し怒っています。「望めば必ず」という私の強い信念は、あなたのあまりに長い不在により時折崩れ落ちそうになります。そしてそうした時に立ち現れる弱い心は、ひとつ下の段に私を誘ってきます。そしてそれが下降だということを決して悟らせないようにひたひたと私に迫り、あがっちゃえよ、と言ってきます。

しかし悪いけれど私は、そんな誘惑には乗りません。なぜなら私はあなたがいないとかいるとかそんなこととは全く別のところであなたに手紙を書いているのであり、私が信じている、気持ち悪いほど具体的な、世間の人たちは「妄想」と言うかもしれない素晴らしい夢は、こうして書き続ける行為によりある程度の充足を持てるものなのであり、たまに充足があるならば長い不在など問題にはならないほどに、私の気持ちは強く正しいものだからです。

「○○ってこういうもんだよ」と語っちゃうような大人には絶対になりたくありません。毎日同じ場所に行くことに歓びを感じてしまうような保守的な細胞の固まりであるところの私は、常にそういうことを意識していないときっとだめになるでしょう。何かを言い切る人が嫌いです。常に迷っていたい。ださいけど、そうだよロックンロールだぜ、と思う。転がっていたい。保坂和志が(もう随分前に)ジュンク堂のトークショーで言っていた、「人生に直面する」という言葉が私は今でも印象に残っています。「直面する」ということが、就職活動中の私には強烈な実感を持って迫ってきたのを覚えています。生きるか死ぬかのところで、やっていたい。



強気なことを書きすぎたでしょうか。
勢いで綴ったら、なんだか改行も少なくて
よみづらいですね。
冷静にこの先を書きます。

お手紙頂いていたのに、
ご無沙汰してしまってすみません。

相変わらずあなたは
日本にはいないみたいで、
その気儘さが本当に羨ましくなる日もありますよ。

今日は雨の中、牛腸茂雄展に行ってきました。
三鷹市アートギャラリーというところに行くために、
初めて三鷹駅を降りました。

中央線から見下ろす「杉並区の住宅街」が好きです。
私は東京の西のほうに縁がないから、
あれは見るたびに「非日常」を感じます。
フィッシュマンズを聞きながら毎日暗い気持ちで中央線に乗っていたという、
ある友人の学生時代を想像し、
不思議な気持ちになりました。
雨はそういう、浮遊した気持ちには、
いい演出効果がありますね。

それからね、駅前の
何気なく入った喫茶店のハヤシライスが非常においしく、
今日は良い日だと思いました。

写真については、詳しいあなたに
わざわざ私が語ることもないけれど
非常に素晴らしいものでした。

牛腸茂雄の写真や生い立ちには
たくさんの人がたくさんの事を書いていて、
図録や今回の写真展に寄せられた様々な
文があるので、
ここで繰り返すまでもないと思います。
(例えば、彼の写真には
死が近くにあったもの特有の
他者との距離感があるとか、そういった類のことです)

ひとつ、非常に感覚的な、ぱっと思いついた
感想がひとつあったのであなたに向けてだけ書きます。
間違っていたら恥ずかしいから
ふーんと思ってください。

牛腸氏はたくさんの子どもを撮っているのですが、
子どもの写った写真を見ていて共通して
感じたことがありました。

彼らのまわりの世界は、
写真の外に無限大に続いているように見え、
そして、彼らがいるその場所は、
どこでもない(具体的な名称の浮かんでこない)場所に
思えるのです。

うまく説明できないのでどうにもこうにもね。

最近子どもに興味があります。
帰りにちょこっと寄った新宿伊勢丹の前に可愛い女の子がいたので
じーっと見つめて笑って手を振ったら、
最初はけげんそうにじーっと見つめ返すだけだったのが
最後には小さく手を振り返してくれました。

子どもは本当のこと(なんてないけど)だけで
真っ向勝負してくるので、
きっと接していて楽だと思います。

なんてこれも妄想だけれど。

まだ雨の音がします。水の音は落ち着く。
あなたに会いたいですよ、本当は。



かしこ


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