comfortable diary



予兆。

先日、『タカダワタル的』という映画が函館で公開され、
なんとその高田渡さんが、映画館でライブをしてくれた。
わたしは都合がつかず行けなかったのだが、その数日後だった。
彼が釧路の病院で亡くなったのは。

わたしは高田渡さんのことは殆ど知らない。
60年代フォークの重鎮だったことぐらいしか。
けれどその伝説化された彼の噂を耳にし、その映画のことにも
とても引き寄せられる何かがあって、ライブのことも楽しみに
していただけに、その一報をめざましテレビで観たときは、
思わず「嘘でしょう?」と声がでたほどだった。

この間映画祭のミーティングがあって、事務局に出向いた。
事務局といっても、副実行委員長の経営する喫茶店なのだけど、
O氏のお店は芸能人やら映画監督やら、とにかくすごいメンバーが
出入りする、ある意味穴場な喫茶店。

「こんばんはー」と挨拶すると開口一番、
「高田渡さんが亡くなったの知ってるか?」と聞いてきた。
「えぇ、びっくりしました」と答えると、
「先日さー、あのライブの日、ふらっとうちの店に来たんだよ」
…というのだ。

「えー、なんで?」と聞くと、彼とは昔から親交があって、
今回もライブの前にフラリと立ち寄ってくれたらしいのだ。

「今までさー、写真なんて撮ったこともなかったし、改めて
サインを求める間柄でもないし、ただ話をしたり、ライブやったり
そんな関係だったんだけど、なんだか今回に限りなんとなーく
写真を撮ったんだよな。ホラ、これがその写真でさ〜。
んで、CDにサインまで書いてもらったんだよ。なんか感じるものが
あったんだろうなぁ。でも最期に逢えて良かったよ。話せて良かった。」

そんな話を伺いましてね。

あぁ、そういうのってやっぱりあるのかなぁと思ったんですよ。
彼も新聞社の人から第一報を受けたのだけど、吃驚はしたけれど
あぁやっぱり…というか、逢いに来てくれたんだろうなぁ…というか、
予感とまではいかなくても、小さな小さな勘のようなもの。

写真の中のあの仙人のような風貌。
少し疲れたような穏やかな顔。
わたしが座ったこの席に、ほんの少し前に座ってらしたのかと。

なんだかちょっぴり切なくて泣きそうになった。

わたしともこうやってすれ違っていたのだなぁと。
O氏の何もかもわかっていたような、全てを受け入れたような
その表情にも。

どうか安らかにお眠りください。謹んでご冥福をお祈りいたします。



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2005年04月30日(土)




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