日々の泡・あるいは魚の寝言

2004年07月05日(月) 東京紀行つれづれ語り3

ちょっと今日は夏ばてモードなので、文章がへろへろしてるかもしれません(^^;) と、あらかじめいいわけしておきます。
BGMは、今井美樹「Ivory III」。今夜の香りは、カフェカフェアイス。
レモンとフリージアに洋なしと、なかなか、心地よい香りです。

さて。東京紀行の続きです。 

佼成出版社様のゴージャスマンションに滞在中のある日の夕方、童心社H氏とN嬢、ポプラN嬢とK嬢が差し入れをもって遊びに来てくれました。
本家苺豆大福とか、いいかおりの石鹸セットとか、ハートの鍵とか、いろいろさしいれていただいちゃって、らっきーvでありました。
嬉しかったです、ほんと(^-^)

で。
みんなでマンションの豪華さに驚いたあと(なんていうか、芸能人が住んでいそうなひろいひろいお部屋でした…)、近くの街に、晩ご飯を食べにいったのです。

童心N嬢だけ、先に帰ったので、私も入れて全部で四人のメンバーで、そろそろくれてきた時間の東京の街を、とことこと歩きました。
高円寺商店街の方を目指して歩いたのですが、途中で、くらいくらい、住宅地を抜けていくことになりました。

場違いな、大型トラックの駐車場がありました。
無人のトラックたちが、ひっそりと、並んでいます。
そのあたりは、ひときわ、闇が濃く、またトラックの背丈も、相当大きかったので、私は内心、びびっていました。
人の乗っていない大きな車は、怖いものです。
何か、異形のものが、ふいに動かしそうな気がするから。
そう、その段階で、私はすでに背筋がぞっとしていたのです。

と。
駐車場を通り過ぎた、ポプラ社K嬢が、叫びました。
「ちょっといまの、怖いですよね。なんでしょう、あれ」
一同、駐車場を振り返ります。
私以外の何人かが、あ、っと叫びました。
K嬢、言葉を続けます。
「作り物ですよね。趣味が悪いですよね、あんな怖いものをおくなんて」

怖いもの…
怖いもの?

「え、なんのこと?」とききながら、私はトラックを凝視しました。
なにやら、違和感があります。

するとそこに…

運転席の前の、ガラス窓に…

こちらを向き、目を閉じた、子どもの生首が見えたのです。

逃げました、そりゃもう(^^;)
たぶん、同行のみんなも、何歩か逃げたと思う。

でも、私はそのメンバーより、三歩ほど先まで走り、そしてわれに返りました。
実は私は、内心決めていることがありまして。それはつまり、「なにかあったとき、その場にいるほかの人たちよりも先に逃げることだけはやめよう。かっこわるいから」というものでした。

…しかし、三歩も先まで逃げてしまった。
我ながら情けなくて、笑ってごまかしながら、みんなと歩調を合わせました。

編集さんたちが話します。
「あれは、ホログラフとか、そういうのかなあ?」
「うん。リアルだったよね」
「お店に売ってるのかもですね。ああいう能面」

「え、能面???」
私は聞き返しました。「あれって、子どものデスマスクじゃなかったの?」

「子どものデスマスク〜?」
みんな、首をかしげ、顔を見合わせます。
「能面でしたよ。能面がいくつか、車内にかざってあったんです」
「えー? じゃあ私は能面を見間違えたのかなあ?」
「じゃないですかねえ」

私は歩きながら、脳内の画像を検索し、たしかめました。
…どう考えても、さっきみたあれは、能面とは思えませんでした。
年の頃なら、幼稚園の年長さんくらい。
とてもリアルな男の子の死体の、その頭部に見えました。

「デスマスクの、作り物を、かざっているトラックもあったのかなあ」
トラックは、複数台その場にとまっていました。
そういう趣味が悪いものを造る人や、企業があるんだろうか、なんて話をしながら、私たちはその場を通り過ぎました。
霊現象で、私だけがほんとの霊をみたのかも、なんて話も、半分冗談で笑いながらいったりもしましたっけ。

そして、楽しいお食事がすんだ、帰り道。
みんなでもう一度、あのトラックの謎の能面あるいはデスマスクの正体をたしかめようということになりました。

…結論から言うと。
能面をかざっていたトラックと、デスマスクがいたトラックは、別の車でした。
能面トラックは、仕事に出かけたのか、駐車場にはいなくなっておりまして。
そして。
デスマスクの、その正体を、私は自分で見極めたのです。

なんのことはない、ヘルメットでした。
あれは後ろ向きにおいてあったのかな、それが、その表面のでこぼこが、ぼんやりとてらす街頭の光を受けて、ちょうど子どもの顔のような、陰影を造りだしていたのです。

「なるほどー。ほんとに子どもに見えますねー」と、編集者さんたちは、かわるがわる、そのヘルメットを見上げていいました。

「最初に、Kさんが、『怖い』っていったでしょう? あれで私、自分に暗示をかけたんだと思う。何か怖いものがあるって。で、無意識の中で、一番怖いものが、見えたんだと思うな」
私が言うと、ポプラ社N嬢が、いいました。
「すると、村山さんにとって、一番怖いものっていうのは、子どもの死体ってことになりますね」

そうかもな、と、私は思いました。
子どもの死、そのものが恐ろしいということもあるし、子どもが死んでしまうような情景に陥った現場、というのを想像すると……つまりそれは、よほどの非常時、でしょうから……本当に、恐ろしいです。

そして、「生首」と、とっさに思ってしまったのは、あるいは、このあいだの佐世保のネット殺人、去年の長崎の駿ちゃん事件、それから連想して思い出していた、サカキバラ事件の犠牲者の子どもの無惨な姿のイメージのせいもあったのかもしれません。

非日常は、恐ろしいです。
日常の、当たり前の朝が来て、夜が来る、その繰り返しの中で、子どもたちも、おとなも、普通に暮らせる日本であってほしいと思います。

ゴージャスマンションの前まで、みんなに送ってもらって、ありがとうおやすみなさい、と手を振ってみんなを見送りながら、私は本当に、みんなの、今と今につながる未来が、当たり前にゆるゆると続いていってくれますように、と、祈らずにはいられませんでした。

↑なーんて書いてますが、みんなと夜の道を歩いて帰ってくる時、私は、「きっと、能面トラックは、妖怪トラックだったんだよ。今に能面トラックが、みんなをスピルバーグの『激突!』みたいに、どこまでもどこまでも追ってくるよ。怖いねえ」なんて、けらけら笑いながら、話していたんでしたっけ(^^;)

…ほんとはね。内心はこんなだったのですよ(^-^)


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