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指輪物語関連ファイル

YUKI


2003年02月27日(木)
 フロドとサム


ところで、いろんなところで感動したというコメントがでているラストのサムのセリフ・・・
私はあの場面が好きではないです。
ああ、またサムがスピーチを始めた。やめてくれ、と思ってしまうのでした。
それは、ショーンアスティン演じるサムに違和感を持っているせいかもしれません。
サムとフロドは原作よりも若くなっています。
映画は主従の信頼関係でふたりの関係をとらえることはしていないのかも。
かわりにあるのは、友情・・・でしょうか。保護者的な気持ちでしょうか。
そこのところがあいまいなのでサムがフロドを支える根拠がわかりにくいです。
ホビット四人組の中で、サムが一番育ちが良くて、教養がありそうに見えるつーのも問題だ。
サム以外の三人は名家の坊ちゃんのはずだけれど・・・・そう見えないよね?
原作のサムは、なんともいえない深みのある人物です。
彼には固い意志と、生活の中から生まれた知恵があります。
詩を読んだりする教養もあります。だけれども、主人であるフロドより
先に立つことも上にたつこともしない。
イライジャフロドはショーンアスティンのサムのご主人には見えない。
『二つの塔』ですでに、ふたりの力関係は逆転しているように見えます。
そうすると、サムが自分の意志で動き始める場面の、あの変化は出しにくいのではないかと
ちょっと心配です。ゴラムに対する態度も、あまりに冷たい感じかな。
もともとサムはアラゴルンを最初は疑っていたように、
なかなか人に打ち解けないところはあるけれど映画のああいう感じじゃないんだよね。
使用人という分を守りつつ、ご主人をとことんお守りする・・・という関係は
若いふたりには難しいかなあ・・・
そんなサムが炉辺で物語を読むようには、見えないので
最後のセリフが浮いてるように思うのかもしれません。

4月2日追記

メイキングブックを読んだんですが、ショーンアスティンが、PJと意見が対立したことがしばしばあったという記述があって、やっぱり、と思いました。彼はサムを英雄的な人物ととらえてるんだって。サムは自分のことそんなふうには思わないだろうなあ・・・SEEの俳優達のコメントを聞いていても、彼だけは製作者的視点で見てるの。微妙にそれが表れてるから私は嫌なのかしらん。

角川書店『ロード・オブ・ザ・リング』公式メイキングブック
P145〜146より引用

「ピーターは、ハリウッド風の役柄を嫌った。もっと現実的な人間にしたかったんだ。でもぼくは、サムの気高く、英雄的な資質に注目したかった。ピーターは、ホビットたちが演じるおかしみのあるシーンを気に入っていたんだけれど、ぼくはそっちを強調したくないと思っていたし、物語のそこここで彼らがみせる英雄的行為の信頼性を損ねたくないと考えていた。」そのため彼らの間には意見の相違がしばしば見られた。「ぼくは時々、決められたことを守らずに、自分の考えを主張した。はっきり言ってぼくは、頭でっかちで誇大妄想の役者バカでどうしても我慢できなくなってしまう時があるんだ!でもピーターはいつだって辛抱強くて、時にはぼくの意見も入れてくれて、最終的にはちょうどいいところでバランスの取れた役柄が出来上がったと思う。」