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指輪物語関連ファイル

YUKI


2002年01月02日(水)
 トールキン『指輪物語』の感想(まとめ)


■2002年03月31日(日) <本>『指輪物語 旅の仲間』

『ロード・オブ・ザ・リング』の映画を見て、それから原作を読んだ。
映画は『二つの塔』の一部を含んでいるようだが、まだそこまでは読んでいない。

読んで思ったのは、映画はかなり上手に原作のエッセンスを拾っているということだった。
ガンダルフの知恵、アラゴルンの気品、ボロミアの苦悩、レゴラスとギムリの友情、
ホビット達の誠実さ、そしてフロドの勇気。
重い荷物は自分で背負わなければいけないこと。
誰にもそれは、肩代わりできないこと。
それでも、孤独ではないこと。
代わってあげることはできないけれど、
互いの思いやりが、荷物を少し軽くする。
そんな仲間達の気持ちが、読んでいる私の心を
悲しいようなほっとするような場所へ連れて行く。
それは、映画を見ているときにも感じたことだった。

では、映画で拾いきれなかったものは何だろう。
満天の星や、草原をわたる風や、エルフの歌が響き消えていく空間や
おいしい食事をたっぷり食べて、仲間と語らい歌い踊る楽しさや
葉陰の涼やかさ、森の静けさ、水の冷たさ、火の暖かさ、
そういったものかもしれない。
それから、風のように軽々と歩くエルフの姿に象徴される
美へのあこがれとか、そういったもの。
恐怖と戦いさえ、原作ではもう少し穏やかに語られている。
こればっかりは、今の映画だからしょうがないかしら。

もう少し早く原作を読んでおけばよかった。心のやわらかい10代の頃に。
そうしたら、もっと、指輪の世界に入り込めたと思う。
それはものすごく楽しい時間だっただろう。

ところで、文庫二冊目の翻訳者の解説によれば、
指輪は容易に時代への警鐘とか象徴として語られやすいけれども、
それは原作者の本意ではないだろうとのこと。私もそう思う。
でも、それぞれの時代に通じる何かがあるからこそ
読んで勇気付けられるのかもしれない。

■2002年年04月01日(月)<本>『指輪物語 二つの塔』

『旅の仲間』がそもそもの話の始まりと、仲間達の友情の始まりだとしたら、
『二つの塔』は試練の時を描いているのかもしれない。
ばらばらになった彼らは、それぞれが最善を尽くす。
足元にはたくさんの誘惑の罠がある。
誰もが、ぎりぎりのところで選択し、進んでいく。
再会、おもいがけない出会い。ゴクリさえも、善悪の狭間で
与えられた役割を果たしていく。

そして様々なイメージの奔流に押し流されるようにして本を読み終えた。
ストーリーは暗いけれども、その中で光る物がある。
あのシーンもこのシーンも映像になったらさぞ、すごいだろう。
でもまず自分の想像力の中で組み立てることができてよかった。

サム!どうしてこの純朴な庭師にたくさんのファンがいるのか
よーくわかりました。メリーとピピンもね。

■2002年年04月14日(日)<本>『指輪物語 王の帰還』

冥王サウロンとは何者だったのか?
それは生身の人物なのか?
ということは明らかにはされないまま、クライマックスに至るまでの
戦いの激しさと旅の仲間達にふりかかる危機の大きさが
フロドとサムの背負った重荷の大きさを読者に思い知らせます。
暗くて重い空気の中、時に絶望にとりつかれながら
それでもなすべきことをなす彼らに
物語を越えてこころを寄せる人達がたくさんいる理由が
読んでいてわかりました。
暗闇の中に光るものはいっそう明るく、美しいものはさらに美しく、
平凡な日常はかけがえのない貴重なものとして、心に迫ってくるようでした。
最終巻の半ばで物語りはクライマックスを迎え、そのあとは
戦いの後の、旅の仲間のそれぞれについて、おだやかなエピローグが続きます。
激しい戦いの最中死んでいった人々も、丁重に弔われ、追悼の歌に歌われることによって
彼らの死は無駄ではなく、永遠の命を与えられる・・・ということが
疲れた読者の心にも染み透っていくようでした。
荒らされた故郷もやがて緑に包まれて、子供達の笑い声が響くようになる。
しかし、もうそこには住めない人もいる。
この長い物語も、作品の世界の歴史の中ではほんの一場面で、
物語に先立つ物語があり、物語のあとにも世界は続く。
そういう世界に遊ぶことができるということは
なんて幸せなことでしょう!

■2002年年04月27日(土)<本>『指輪物語 追補編』

岩波少年文庫の『ホビットの冒険』を再読しつつ、
立ち寄った本屋で『指輪物語7』追補編を買い
アラゴルンと旅の仲間についての記述を拾い読みした。
ホビットもそうだが、この本の内容も映画の中に反映されている。
読めば読むほど情報量が増えていくので、また見に行きたくなって困る。


(ややネタバレ)
アラゴルンの生い立ちから死まで。
王冠と王錫を身につけることの意味について知ると
王の帰還の大団円の描写の場面をまた違った意味でながめることになる。
旅の仲間達はみな一人になることなく、アラゴルンの横には二人の友が眠り、
西の国にあとから行く友もいる。
アルウェン姫の話が一番哀しいのだけれど、
もしや映画にリブ・タイラーを起用したのは、あんまりはかなげな姫にすると
見るだけで涙してしまうからかしらん。
地図とかCDとかDVDとかシルマリルとかイラスト集とかカレンダーとか
いくらでも時間をつぎこめるものに、はまってしまったのは
幸せなのか不幸せなのか?

そして、ネットでいろんなサイトをあさり、ダウンロードした次回作予告編を
何回もリロードし、おまけのCD−ROMを再生して時間をつぶしているのである。
ガンダルフを演じたサー・イアン・マッケランの公式HPに
映画を撮っている時の日記が載っている。これがとてもおもしろい。

The Grey Book
http://209.240.152.182/mckellen/cinema/lotr/journal.htm
The White Book
http://209.240.152.182/mckellen/cinema/lotr/wb/index.htm


クリストファーリーの公式HPにそういう撮影日誌みたいなものはないようだが
トールキンファンの署名運動の話が載っていて笑った。
PJは、リーに敬意を表したのか、サルマンの最後を派手に演出しようとしているらしいのだが、
ファンの皆さまは、「お願いだから原作どおりに作って下さい。撮りなおしてください」
と言って署名を集めているらしい。

The Lord of the Rings A Better End to Saruman Petition
http://www.petitiononline.com/lotrfans/petition.html


■2002年年04月29日(月)<本>『ホビットの冒険』岩波少年文庫

中学生の頃に確か一度読んだはずだけれど、すっかり中身は忘れていた。
トロルのところと、ゴクリの存在はおぼろげながら覚えている。
これを読んで、指輪物語の第一巻を図書館から借りて
1ヶ月も抱えていたのに、ついに最初の50ページほとが読めずに
あの世界に入れなかった。そして今ごろはまっている。

『ホビットの冒険』はとてもよくできた物語だけれど、
串団子のように冒険が続く部分と、叙事詩的な五軍の戦の部分が
ずいぶん趣きが違うように思った。
それは執筆当時の世界大戦という世相や、後に書かれた『指輪物語』への
構想が広がったということの影響だろうか。
子供向けのお話として終わるならば、ビルボが最後に調停役を果たして
めでたしめでたしとした方がまとまりは良いように思う。
そこへゴブリンとの戦いと死人占い師という要素が入ってくる。
戦いが終わりめでたしめでたしとなっても、死んでしまった人たちは帰らない。
お話を聞いた子供達は、そのほうが、共感できたのだろうか?

ビルボもドワーフ族もエルフ族も、どこか頑固で、簡単に良い人に
なったりしないところがおもしろかった。
だからこそ、最後の最後で本当に正しいことは何か本能的に
理解して行動するビルボの良さが際立ってくる。
ビルボ自身もものすごく立派というわけではないんだけど
大事なところははずさない。

ガンダルフは助けてくれるんだかなんだかわからない妙なポジションにいる。
肝心な時にいなくて、必要な時には戻ってきている。
そして、ちょっと用事があってな、とか言いながら、中つ国のどこかで
大事な仕事をしているらしい。
指輪の登場人物はほかはエルロンドが出てくるが、エージェントスミスのイメージが
ちらついて笑ってしまった。ドワーフのバーリンに涙。

『ロード・オブ・ザ・リング』の冒頭部分と呼応しているところがたくさんあるので
今度映画を見るときにはまた違った味わい方ができるだろう。
ドラゴンの花火はどう考えても、竜のスマウグだし。
楽しかった。

■2002年05月02日(木) <本>『指輪物語』再読中

9冊の文庫本と追補編をあちこちひっくり返して読み返す日々。好きな場面とセリフを何度も見て、その周辺を読むと新しい発見があり、また関連部分を探す。そうやって頭の中に自分のインデックスができあがっていく。ファンのたくさんいる作品だから、いろいろな辞典や索引や地図が既にできあがっているけれど、自分で作るほうが楽しい。その作業が一段落したら、他の人のを見てみよう。読んでいて思ったのだが、翻訳の瀬田訳が既にひとつの解釈ではないかしら。もう最近ではあまり見かけなくなった美しい日本語であまり表に立つことなく、適切にはみ出すことなく外すことなく仕事をされている。読み込んでいくうちに、日本語のフィルターの部分も区別がつくようになっていく。ここにもガンダルフのように、経験を積んだおじさんがいるようだ。(かんしゃく持ちかどうかは知らないが)映画のキャラがかぶることはほとんどない。ギムリのビジュアルだけは三つ編みつきで、参考にしているけれど。最初読んだ時はほとんどわからなかったけれど、人の名前、地名、伝説、木々や宝石それぞれに、エピソードがあるような。読んだ範囲の(追補編に出ている範囲)ものには多少反応できるようになった。アラゴルンやガンダルフが思わせぶりなことを言ってるところには、必ず背後にもうひとつの物語があるようだ。かっこいいセリフにじーんとしつつ、その前後の風景描写もすごい、と思ったり。淡々とすすんでいくように見えて、時々はっとするような展開が織り込まれているなあと思ったり。パランティアがらみのところを再読し、「あーばかなことをするんじゃないよー」とはらはらし、そのあとの夢心地の馬上の描写に感動したり。こんなふうにお話にひたるのはずいぶん久しぶりのことだなあ。

(過去ログの文章を少し編集してあります。)