トーキョー・ハッピーデイズ
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2002年01月27日(日)  最大のライバル

 髪を切ってから初めて紺野くんの家に行く。
 どういう反応をするか見たくてあえて私から何も言わずにいた。

 彼は昼間からプレステに夢中だった。
 ようやく仕事が落ち着いたので、新しいソフトを買ったらしい。
 鍵を開けて家の中に入れてくれた時ですら上の空で、まだちゃんと私の顔を見ていない。
「夕食はなんか美味しいもの食べに行こうよー」
 ファミレスなんかじゃなく。
「んー」
「何食べたい?」
「うーん」
「和食? 中華? パスタ?」
「うん……」
 答えになってないっつーの。
 先週許してやったのはやっぱり失敗だったよ、明子。
 でもこういう時は何を言ってもムダだっていうことくらい、私も学習している。
 あきらめて前に置いていった雑誌のページをめくりはじめた。

 1時間後。
 もう雑誌も読者投稿欄まで読み終えようとしていた。
 トイレに立って戻ってきた紺野くんが、つぶやく。
「あれ?」
 やーっと気付いたか。
 目を上げると、彼の目が見ているのは、一時停止のゲームの画面。
「そっか、わかった。こうすればよかったんだ」
 ……さすがに私もキレた。
 私は雑誌を放り投げてプレステまで這って行き、リセットボタンを押した。
「あっ」
 唖然とする紺野くん。
 ゲームはふりだしに戻る。
 と言っても、どうせどっかでセーブかけてるんだろうし、そう思うとかえってムカツク。
「先週の反省とかないワケ? ゲームやりたいんだったら最初からそう言ってよ。わざわざ邪魔しに来ないから。私だって休日は貴重なんだからね!」
 紺野くんは相当ショックを受けたらしく、ぼーっと画面を眺めている。
「ちょっと、どこ見てんの!?」
「ひっでー、あとちょっとだったのに!」
 紺野くん、逆ギレ。
「またいつでもやり直せばいいじゃん」
「そんな簡単なもんじゃないんだよ!!」
「あ、そー。そりゃやりがいがあって楽しいでしょ」
 口でかなわないと彼はだんまりになる。
 紺野くんは黙ってまた私に背を向けてゲームをはじめる。
 ふーん。そうくるか。
 頑固者め。
 帰ろっかなー。
「ん?」
 紺野くんがつぶやく。
 どうせまたゲームで何かあったんでしょ。
 私は左手の人差し指のマニキュアが少しはげてるのに気付いて、家に帰って塗り直そうとココロに決めた。
「切った?」
「は?」
 顔を上げると、紺野くんが振り返ってこっちを見ていた。
「遅い!!」
 私は紺野くんの顔目掛けてクッションを投げ付けた。


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