トーキョー・ハッピーデイズ
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2002年02月02日(土)  美里のお宅訪問

 美里の新居に初めてお邪魔する。
 新居とはいっても、もう結婚して一年経ってしまった。
 美里と会うのも実は結婚式以来だったりする。

 都内の3LDKのマンション。
 行くなり家中を見せてもらう。
 美里は仕事を続けているしダンナさんも忙しいみたいだけど、それでもちゃんとここには二人で生活している空気がある。
「料理してんの?」
「んー、一応ねー。早く帰れた方が気が向いたら作るって感じ」
「ダンナさんも作るんだー」
「うん。彼の方が一人暮らし歴長いから、家事は得意なんだよねー」
「いいね、それ」
「助かるよー」
「洗濯や掃除も?」
「うん。してくれるよ」
「理想の夫だねー」
「紺野くんも家事はするんでしょ?」
「まあねー。でも一緒に住んでるわけじゃないからさ」
 キッチンでコーヒーを入れる美里の横顔を見ながら、彼女の顔つきが前と変わったと思う。
 もちろん悪い意味ではなく、いい意味で。
 太ったわけではないし、結婚したからってメイクや服装に手を抜いたりしていない。
 一体何が違うんだろう。
「どうぞ」
「ありがとう」
 美里がコーヒーカップを運んできて、椅子に座った。
 彼女が自分のカップにミルクをたくさん入れているのを見て、私はびっくりした。
 学生の頃から彼女はコーヒーが好きだった。
 絶対にミルクや砂糖は入れず、ブラックじゃなきゃダメ、というこだわりがあるはず。
「それ、ほとんどコーヒーの色してないじゃん?」
「うん、そう。最近はカフェオレにしてるんだ」
 そう言って笑う美里の顔を見た時、すぐに私はピンときた。
「……もしかして、できた?」
「なんでわかるの?」
 美里は目を円くした。
 やっぱりね。
「そりゃわかるよ。だてに長く付き合ってないもん」
「そっか」
「何ヶ月?」
「今、5ヵ月入ったとこ」
「お腹わからないね?」
「まだそこまで大きくないもん」
「コドモ、当分作らないって言ってたじゃん」
「あはは。まーねー」
「とにかく、おめでとう」
「ありがと」
 そうか。コドモか。
 結婚して、家を買って、コドモを産む。
 順調な流れに乗ってるんだ。
 私が立ち止まっている間に。
 彼女は元々私や明子よりも大人だったけど、今は更に大きな余裕みたいなものを感じる。
 逆に私は不安定で落ち着かないってことなのかな。


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