2006年12月24日(日) |
鬼の守人 ─嚆矢─ <十伍> |
二本、更新したいので、空いてる日付を有効活用。
まずは鬼の続編をアップ。 もう一本は、出来次第で。 今は、まだ、何をアゲるか判ってません(笑)
心を結ぶ、と書いて、けっしんと表してみる。 今回の鬼話のテーマかもしれないですね。 心を決めることで、前に進む事が出来る、という・・・。
そこが誰にとっても難しいわけですが(笑) 心が決まっちゃえば、案外、早いよね。 一瞬、一秒でも、人は変わっていける。 というのを自分なりに鬼に投影させて書いてみました、ヨ。 アハハハハ(゜∀゜) ←照れ隠しの模様
十伍、結心
「落ち着け。気を鎮め、呪の道筋を辿ればいいんだ」 兎草は大きく息を吐くと、自分に言い聞かせる様に言った。 すっくと立ち上がり、腕を広げたり伸びをしたりして、固まりそうになる筋肉を解す。
大輔は、兎草に一つ上に進め、と言っているのだろう。 力を使うことを覚えるのだ、と。
そして、それが出来ると思うからこそ、大輔は今この場に兎草を送り出したのに違いない。 回りくどい言葉は、孫への愛の鞭なのかもしれなかった。 いや、デキの悪い、末の弟子への叱咤だろうか。 ≪あ、そうそう。兎草君。それからね〜”方陣によって捕らえ、後は素子に任せよ”って家長は言ってたよ≫ 断駒は、美希の腕の中で、もう一言付け足した。 それに、兎草は苦笑して、頷いた。 美希はといえば、これから起こる事を、静観すると決めたのか、大人しくしている。 幼い見鬼は、断駒に任せておけば、間違いはない。 兎草は、自分の成すべき事に集中しようとしていた。 そんな兎草に馬濤がニヤリと笑い、茶の髪を乱暴に掻き混ぜた。 「お前が結界張ってる間、俺が守ってんだから、安心しろ」 それから、くしゃくしゃにした髪の毛を今度は優しく、撫で付ける。 「大丈夫さ。お前は、やれば出来る子だからな〜」 そんな風にふざけて言う馬濤に、兎草は怒るよりも先に、笑ってしまった。
なんて、憎たらしい優しさだろう。 でも。 それで不思議と、やれる気になるから、面白い。
自分を支えようと放たれた言葉は、真実、自分を支えてくれる。 古より言葉に秘められたる神、気、言霊。 言葉に力が宿る、というのは、こういう事なのだ。 身を持って実感したその感覚に、兎草は温かな気持ちになった。
大丈夫。 出来る。
兎草は、幼い頃に頭の中に刻み込んだ、結界の術式を一心に頭に描き出した。
方陣。 それは、守りであり攻撃でもある結界だ。 張った結界の外に力や気を逃さず、内に閉じ込め、何モノからも隔絶する鋭角の力。 反対に、内にあるものを守るには、円陣を用いる。 柔らかく包み込む、なだらかな、力。 大輔の言うように、今、張らなければならないのは、方陣だった。 あの、獲物をいたぶる様に上空を漂う妖しには、それが似合いだろう。 兎草は、方陣を張る手順を頭に思い描き、シュミレートした。 ぶつぶつと口に出して、呟く。 それはまるで、部屋の中でうろつきながら単語帳を捲り、覚えた英単語を暗唱する兎草の姿そのままで。 馬濤は、思わず笑ってしまった。
集中していた兎草は、それに気づきもしなかったが。
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