2006年12月19日(火) |
鬼の守人 ─嚆矢─ <十参> |
こないだは、微妙にスン止めだったかーと反省しつつ(笑) 続編をアップ。
スン止めしない方向で頑張ってみましたが。 終幕を迎えるまでは、強制焦らしプレイ発動っぽい気配でござますよ☆ すみませんネェ・・・・((orz
十参、流水
断駒は兎草の周りを犬の格好のまま飛びながら、言葉を紡いでいく。 大輔は断駒に伝言を託し、兎草へと預けたようだ。 何故、そんな回りくどい事をしたのか気になりはしたが、兎草はとにかく大輔の言葉を聴くことにした。 ≪”──決して、鬼喰いが力を使ってはならない”≫ そして、告げられた思いがけない言葉に、 「何でだよッ?兎草が危ねえんだぜ?!俺は、問答無用でヤツを喰うぞ!!」 語気も荒々しく、馬濤が怒鳴り散らした。 それが、馬濤の契約なのだ。
兎草と交わした、唯一、絶対の誓い言。
それを違える事は出来ないし、するつもりも馬濤にはさらさらない。 何であろうと、兎草に手を出す奴は、屠るだけだ。 だから、激した。 いかに大輔といえど、既に結ばれた契約に口を挟むことは出来ないはずで。 それなのに。 断駒が紡ぐ言葉は、あくまでも、馬濤は力を使うなという言葉だけだった。 ≪”力を使ってはならない”≫ 繰り返されるその言葉に、馬濤は口を引き結んだ。 ≪”分岐の流れ、来たり”≫ 断駒は、ゆらと揺れながら、言葉を紡ぐ。 その言の葉は、大輔の言葉の様でありながら、別の響きを持つものであった。 兎草は、ただ、それに耳を澄ませるしかない。 ≪”取捨選択、掴む手を、その流れを妨げてはならない”≫ ≪”流水流れ落つる先、其れ即ち、此の世の理の内”≫ ≪”辿り着く先、其処に在るは、己の姿”≫ ≪”選び取りし、姿の内、何があるかを見よ”≫ 「───────」 大輔の託した言葉に、馬濤の歪んでいた口許は戻り、変わりに笑みが浮かんだ。 馬濤には、その意図が、正確に読めたらしい。 しかし、兎草はといえば、途方にくれていた。 ≪”今のお前が成すべき事を知れ”──だって≫ 断駒は伝え終わると、難しい話に厭きて退屈そうにしている美希のところに飛んで行ってしまった。 大事な役目を済ませば、あとは自由。 お気に入りを見つけた断駒らしい行動だった。 肩にかかる髪を指でいじっていた美希は、お気に入りの断駒が来たことに満足したのか、両腕でしっかり抱き締めて笑んだ。 「たちこまちゃん」 ≪美希ちゃんは、僕が守ってあげるからね♪≫ 断駒も、楽しそうな声を上げている。 真の役目は、言伝なのか。 この幼い少女を護ることだったのか。 どちらなのやら。 読み切れない断駒を横目に見ながら、兎草だけが大輔の意図が解らず、首を傾げていた。 自分を守る馬濤に、力を使わせず、何をさせるつもりなのか。 そして、自分がここにいることが、その流れの内だというならば。 何かを成す、出来る事が、有るという事だろうか。
この、力が使えない自分にも。
兎草は、徐々に弾んでいく鼓動を抑えながら、考えた。 緊張が、高揚感に変わっていくのは何故なのか。 内なる囁きが、聴こえたような気がしていた。
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