6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2006年02月22日(水)   夜は問い、月に語る

無敵の女王様企画

2月22日0時更新───に、モノの見事に間に合わず(号泣)

午前2時に更新の罠発動・・・・・orz

お題のの両方を絡めて、そこに月のイメージもいれてみましたよ。

少佐とサイさん。
9課設立当時、な過去系。
妄想の激しさに、吃驚でス。わ。 

捧げ文「死神〜」の続きみたいな雰囲気になってしまいましたね(笑)
ずっとあの続きを書きたいと思ってたので。
ほんとは。
もう少し、書き様があった気もするんですが。

今はコレが精一杯・・・(花を差し出しながら)



とか言って。
知らぬ間に、書き直してるかも・・・・ネ☆(ノ´∀`*)
























新しい住処となるビルの屋上。
吹き荒ぶ風に曝されながら、眼下を見下ろす。
乱立する高層ビル群。
氾濫する光。
それを縫うように走る幾筋もの帯は、車道だろう。

溢れる人々、物。

どれも、今まで生きてきた場所には、無かったモノだ。
銃声も硝煙の臭いも、爆音も。
曝されたままの死体、乾いた血の跡も、倒壊した建造物も、無い。
憤怒、慟哭、悲鳴も、嘆きも。

冥い闇夜も。

ここには、無い。
恐ろしいまでに整えられた街並みは復興の証だが。
奥底深く何かを孕み、この街は眠っているだけだと感じる。

いつ、目醒めるのか。

それはまるで、身の内に獣を飼っているようで。
肌に馴染む、気配がした。
ここも、形は違うが、同じリアル。

戦場なのだろう。


「サイトー」


背後から、自分を従わせる声が、名を呼ぶ。
振り返ると、そこには、女の姿があった。
紫暗の髪、血色の双眸。
自分を支配する美しい女の姿が。

「少佐か」
「何をしてる。こんな寒い中、ぼうっとしてると風邪をひくぞ?」

からかうようにそんなことを言う女に、口の端を引き上げて見せた。
完全義体の女。
引き換え、自分はほとんどが、生のままだ。
電脳化。
それから、女に奪われた左眼と左腕以外は。

「生身も、そうヤワなもんじゃない」

肩を竦め、おどけて見せると。
近付いて来た女は微かに笑い、すまないと口にした。
その言葉には、謝罪というより、返された応えに面白がっている節があった。

「生身の感覚を失くして、久しいからな」

世界最高の義体使い、そして、電脳使いでもある女。
戦場で、この女を知らぬ者は無い。
戦いの支配者。
美しい死神。
この女が、この女である為に何を無くし失い、捨ててきたのか。
付き合いの短い自分に知る術はないが。
今、目の前にある、赤い眼があれば。
それで良かった。

「あんたは、その感覚を義体を操る術に昇華した」

そう言う事だろう、と返すと女は瞬きをして、薄く微笑んだ。
屋上に張り巡らされた低いフェンスに寄り掛かり、それを残された右目で捉える。
戦場を駆けるこの女は、まるで、夜のように静謐。
そして、新月の様に鋭利。
けれど、こうして微笑を浮かべる姿は、満ちた月の光のように柔らかい。

「ここで何を視ていた?」

隣りに立った、夜を纏う女は眼下を見下ろし、問う。
先程まで視ていた景色に背を向けたまま、応える。

「これから戦場になる街が、どんなものか、視ていた」
「そうか」

頷いた女は、静かに街を視界に収め。
自分は、その女を見遣った。

軍を離れた女に従って、日本国の組織に属することになった。
勿論、イシカワやバトーという大男も一緒だ。
対テロ組織、公安9課。
別名を攻殻機動隊。
警察機関でありながら、軍隊並みに攻性の部隊。
しかも、大臣直属で目障りな人間が介在しない優位な立場のおまけ付き。
実質の指揮者は、女が信頼する人間だから、これ以上の居場所もないもんだ。

テロリスト紛い、いや、そのものの様に生き狙撃もしてきた自分が、対テロ組織の一員とは。
似つかわしいとも思えず、笑えるが。

自分の存在する場所は、あの女の傍しかないのだから、否やがあろうはずもない。



肩越しに、街を見下ろし、流れ明滅する光に目を細めた。



この国は、世界のどの国よりも、光が溢れている。
昼夜を問わず、人が蠢き、あらゆる物が動く。
けれど、きっと。
その光のせいで。
どこの国よりも、深く冥い、闇が存在しているのだ。

女は。
その闇を、敵に定めたのかもしれない。
ならば、それが自分の敵だ。

黙したまま、沈黙に身をゆだねていると、不意に女が口を開いた。


「満足しているか?」


それが、何に対しての問いか、すぐに解った。
己の立ち位置。
心の在り様。
矜持。
俯かず、折れず、居られるのか。

「いきなり、どうした」

そう返すと、女は彼方の闇を見据えたまま、口を閉ざした。
否と言わせぬ支配者の口で、言葉を吐くくせに。
この女は、いつだって、答えを求めている。
そう感じるのだ。

あの時、答えを求めたように。

生と死の境界に追い込み、
「私の部下になれ」
そう、命じながらも。
それでいいのかと、赤い血色の目が問うていた。
今も、同じ目をしている。

女の静かで、美しい横顔。

どう、この女に説明すべきか。
自分の今の感情を。
一度、国を捨て、他国で生きた。
己の引いた引き金で、死んだ人間はどれほどか。
国など持たず、生き、死ぬ覚悟だった。
それが、拾われ、舞い戻ることになったのは。
生きて手足となれと命じた、この、草薙素子という女ゆえだ。
しかし。
それでいいと選択したのは間違いなく、自分。
ここに立つ、己自身だ。

「らしくないことを訊く」
「────孤高の一匹狼が、首輪を付けられ、飼われることになった」
「飼われる、という感覚がないな」

国に飼われるつもりは無い。
あるとすれば。
女に付けられた首輪を外すつもりが無いという意思だけだろう。

「俺は、草薙素子という女に命を預けた」

今に、満足している。
そして、これからも、この満ち足りた気持ちが欠ける事は無いだろう。
この女に失望する日など、来はしないのだから。

「それだけの話だ」 

そして、従う自分に、嫌気が差すこともないのだから。

「違うか?少佐」

この答えに、満足するか?
逆に問うと、血色の眼が、こちらを向いた。

女は、瞬きをすると薄っすらと微笑んだ。


「そうか」





その一言が、自分を支配する。









夜の帳に覆われる空を見上げた。

星がまばらに散ることも無く。
月もまた、無い。




ただ。

地上の月だけが、傍らに佇んでいる。









END


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武藤なむ