無敵の女王様企画。
2月22日0時更新───に、モノの見事に間に合わず(号泣)
午前2時に更新の罠発動・・・・・orz
お題の夜・闇の両方を絡めて、そこに月のイメージもいれてみましたよ。
少佐とサイさん。 9課設立当時、な過去系。 妄想の激しさに、吃驚でス。わ。
捧げ文「死神〜」の続きみたいな雰囲気になってしまいましたね(笑) ずっとあの続きを書きたいと思ってたので。 ほんとは。 もう少し、書き様があった気もするんですが。
今はコレが精一杯・・・(花を差し出しながら)
とか言って。 知らぬ間に、書き直してるかも・・・・ネ☆(ノ´∀`*)
新しい住処となるビルの屋上。 吹き荒ぶ風に曝されながら、眼下を見下ろす。 乱立する高層ビル群。 氾濫する光。 それを縫うように走る幾筋もの帯は、車道だろう。
溢れる人々、物。
どれも、今まで生きてきた場所には、無かったモノだ。 銃声も硝煙の臭いも、爆音も。 曝されたままの死体、乾いた血の跡も、倒壊した建造物も、無い。 憤怒、慟哭、悲鳴も、嘆きも。
冥い闇夜も。
ここには、無い。 恐ろしいまでに整えられた街並みは復興の証だが。 奥底深く何かを孕み、この街は眠っているだけだと感じる。
いつ、目醒めるのか。
それはまるで、身の内に獣を飼っているようで。 肌に馴染む、気配がした。 ここも、形は違うが、同じリアル。
戦場なのだろう。
「サイトー」
背後から、自分を従わせる声が、名を呼ぶ。 振り返ると、そこには、女の姿があった。 紫暗の髪、血色の双眸。 自分を支配する美しい女の姿が。
「少佐か」 「何をしてる。こんな寒い中、ぼうっとしてると風邪をひくぞ?」
からかうようにそんなことを言う女に、口の端を引き上げて見せた。 完全義体の女。 引き換え、自分はほとんどが、生のままだ。 電脳化。 それから、女に奪われた左眼と左腕以外は。
「生身も、そうヤワなもんじゃない」
肩を竦め、おどけて見せると。 近付いて来た女は微かに笑い、すまないと口にした。 その言葉には、謝罪というより、返された応えに面白がっている節があった。
「生身の感覚を失くして、久しいからな」
世界最高の義体使い、そして、電脳使いでもある女。 戦場で、この女を知らぬ者は無い。 戦いの支配者。 美しい死神。 この女が、この女である為に何を無くし失い、捨ててきたのか。 付き合いの短い自分に知る術はないが。 今、目の前にある、赤い眼があれば。 それで良かった。
「あんたは、その感覚を義体を操る術に昇華した」
そう言う事だろう、と返すと女は瞬きをして、薄く微笑んだ。 屋上に張り巡らされた低いフェンスに寄り掛かり、それを残された右目で捉える。 戦場を駆けるこの女は、まるで、夜のように静謐。 そして、新月の様に鋭利。 けれど、こうして微笑を浮かべる姿は、満ちた月の光のように柔らかい。
「ここで何を視ていた?」
隣りに立った、夜を纏う女は眼下を見下ろし、問う。 先程まで視ていた景色に背を向けたまま、応える。
「これから戦場になる街が、どんなものか、視ていた」 「そうか」
頷いた女は、静かに街を視界に収め。 自分は、その女を見遣った。
軍を離れた女に従って、日本国の組織に属することになった。 勿論、イシカワやバトーという大男も一緒だ。 対テロ組織、公安9課。 別名を攻殻機動隊。 警察機関でありながら、軍隊並みに攻性の部隊。 しかも、大臣直属で目障りな人間が介在しない優位な立場のおまけ付き。 実質の指揮者は、女が信頼する人間だから、これ以上の居場所もないもんだ。
テロリスト紛い、いや、そのものの様に生き狙撃もしてきた自分が、対テロ組織の一員とは。 似つかわしいとも思えず、笑えるが。
自分の存在する場所は、あの女の傍しかないのだから、否やがあろうはずもない。
肩越しに、街を見下ろし、流れ明滅する光に目を細めた。
この国は、世界のどの国よりも、光が溢れている。 昼夜を問わず、人が蠢き、あらゆる物が動く。 けれど、きっと。 その光のせいで。 どこの国よりも、深く冥い、闇が存在しているのだ。
女は。 その闇を、敵に定めたのかもしれない。 ならば、それが自分の敵だ。
黙したまま、沈黙に身をゆだねていると、不意に女が口を開いた。
「満足しているか?」
それが、何に対しての問いか、すぐに解った。 己の立ち位置。 心の在り様。 矜持。 俯かず、折れず、居られるのか。
「いきなり、どうした」
そう返すと、女は彼方の闇を見据えたまま、口を閉ざした。 否と言わせぬ支配者の口で、言葉を吐くくせに。 この女は、いつだって、答えを求めている。 そう感じるのだ。
あの時、答えを求めたように。
生と死の境界に追い込み、 「私の部下になれ」 そう、命じながらも。 それでいいのかと、赤い血色の目が問うていた。 今も、同じ目をしている。
女の静かで、美しい横顔。
どう、この女に説明すべきか。 自分の今の感情を。 一度、国を捨て、他国で生きた。 己の引いた引き金で、死んだ人間はどれほどか。 国など持たず、生き、死ぬ覚悟だった。 それが、拾われ、舞い戻ることになったのは。 生きて手足となれと命じた、この、草薙素子という女ゆえだ。 しかし。 それでいいと選択したのは間違いなく、自分。 ここに立つ、己自身だ。
「らしくないことを訊く」 「────孤高の一匹狼が、首輪を付けられ、飼われることになった」 「飼われる、という感覚がないな」
国に飼われるつもりは無い。 あるとすれば。 女に付けられた首輪を外すつもりが無いという意思だけだろう。
「俺は、草薙素子という女に命を預けた」
今に、満足している。 そして、これからも、この満ち足りた気持ちが欠ける事は無いだろう。 この女に失望する日など、来はしないのだから。
「それだけの話だ」
そして、従う自分に、嫌気が差すこともないのだから。
「違うか?少佐」
この答えに、満足するか? 逆に問うと、血色の眼が、こちらを向いた。
女は、瞬きをすると薄っすらと微笑んだ。
「そうか」
その一言が、自分を支配する。
夜の帳に覆われる空を見上げた。
星がまばらに散ることも無く。 月もまた、無い。
ただ。
地上の月だけが、傍らに佇んでいる。
END
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