| 2005年09月26日(月) |
触れる温度より熱い抱擁 |
捧げちゃっ隊6兎出張版。
Bさんの素敵絵に萌えて、話を捧げさせてくださいッ!と突進した春4月。 そして、今はもう、秋も深まる9月後半。
・・・・・・・・時の経過が痛い・・・orz
風の便りにBさん誕生日が迫っていると知り。 ここで、何とかせねば、漢がスタル!!(え?)と一文入魂!! 長い時間がかかりましたが(汗) 込められるだけ、愛を込めて、書き上げることが出来たので。 結果オーライかな、と。
Bさん、お誕生日、おめでとうございます!
悦んでもらえたら、いいなと思いつつ、捧げさせていただきます。 ネットの海の片隅から、こそーりと愛を叫ぶ武藤でした(笑)
廃墟、それは緩慢な死を連想させる。 時が止まり、崩れ、朽ち果てるとも、土には還らず。 ただ、その場に在り続ける。
そして、それらが。 生きながら、死んでいるような己を連想させるのだ。
壊れれば、新たな部品に挿げ替えて、生きる。 けして、朽ち果てることの無い連鎖。 体温も心音も、生きてるという匂いさえ。 遠く、記憶の底に沈む。 生身であったはずの部分も、徐々に無くなり。 有機と無機が合成された造り物の身体があるだけ。 自己は曖昧に、そして、自我は揺らぐ。
この廃墟のようだ。
バトーは眉間に皺を寄せ、銃を握る手に力を込めた。
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潜伏する獲物を捕らえる為、バトーはトグサと共にこの廃墟の群れに潜った。 敵を二方向から追い、囲い込む様に網の目を狭め、捕らえる為に。
いつものように軽口を叩き合いながら打ち合わせを済ませ、バトーはトグサと離れた。 電脳に展開された廃墟の地図。 それに迷い無く動く、青い光が走るのを眼の端に捉え、行動を起す。 この瞬間から、トグサの電脳にも、バトーの動きが光となって映っているだろう。 互いの動きを連動させ、敵を追い詰める為の策だ。 バトーは義眼を索敵モードに切り替え、細心の注意を払いながら、動いた。 しかし。 視界を覆う色褪せ壊れた建築物が、バトーの心を粟立たせ、ちらつく思考が獲物を狩る行為から意識を剥ぎ取ろうとする。 集中することが、酷く難しい。 バトーはそんな自分に、嫌気がさした。
らしくない。
生き抜くための選択。 納得ずくで今の己を選んだくせに、未だに付き纏う、迷いのような感情が苦い。
迷い。 それとも、寂しいのか。 悲しいのか。
人とは掛け離れた、義体になったことを?
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義体になり、生身の部分が欠けていく度に。 死と隣り合わせ、否、死と同調している己を強く意識する。 壊れ、再生し、朽ち果て、しかし土には還れない。 新たなる部品が、己を生かす。 生と死と、その狭間で、ただ立ち尽くし。 常に棘のよう突き刺さるのは、義体という事実。 それはじわじわと侵食し、バトーの奥に眠るゴーストを苛立たせるのだ。 抉るようなその感情は、痛みを伴う。
故に、奥深く沈み込ませ、忘れなければならない。
しかし、その真実は、時にこうして浮かび上がり、容赦なく己を苛むのだ。 その引き金は、何処にでも、転がっている。
そう、この廃墟のように。
ここは、堪らなく、嫌な場所だ。
バトーは電脳の内で、吐き捨てるように呟く。 口に出しては、言いたくなかった。
叫びだしそうな感情が込み上げてくるのが、怖ろしかった。
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トグサの青い光が、ある一点で、動きを止めた。 電通で呼びかけても、応えが無い。
何か、あったな。
バトーは、舌打ちし、光の示す先への最短距離を駆け出した。 ブーツが高らかに足音をたてるのも構わずに。
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折れ曲がり、剥き出しになった鉄骨。 崩れ落ちるにまかせた硬い壁。 割れた窓硝子の残骸、口を開いた窓の奥には、更なる廃墟が連なる。 その廃墟の群れは、眩しいほどの昼の光を浴びているが、ここには届かない。 ただ。 古びた換気扇の隙間から、薄暗い闇を溶かすような淡い光だけが射し込み、寄せ集まったそれらが辺りを照らすのみだ。 その不安定な光は、ゆらりと風に嬲られるように、動いて。 影と光を生み、埃だらけのコンクリの床を撫でるように這う。 そして、軋む錆びた音がこの場を支配し、無機物をより一層、死に近しい物にする。
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埃を散らしながら、電脳が示すその一室に足を踏み入れたバトーは、銃を構え視線を走らせた。 素早く、銃口を数箇所に向ける。 そして、敵のいないことを確認し、バトーは銃を胸のホルスターに戻した。
鳴らぬ心音が高らかに鳴り響き、鼓膜を震わせ。 弾まぬはずの息が弾み、咽喉を焼くように感じる。 そんな生身の感覚をバトーの義体に蘇らせるのは、いつも、この男だった。
無機の義眼は吸い寄せられるように、有機の者を見つける。 死んだようなこの場にそぐわぬ、生きた色、温度を放つトグサの姿を。
床に散る、見慣れた茶の髪。 無造作に投げ出された手足。 その首筋には、電脳錠が見えた。
バトーは跪き、ぐったりと横たわるトグサの頬に触れ、口許に手をあてがう。 仄かな温かさと微かな呼吸が、手の平を掠める感触に深く息を吐いた。 無事であることは青い光の明滅で判っていたが、触れることで、やっとバトーの昂ぶった神経は落ち着きをみせた。
生きている。
そのことが、深い、安堵の息を生む。 自分と対極の、生身の身体のトグサの存在は、己の中で比重を増し。 いつの間にか、手離せない存在になった。 この男が、自分に生きているという実感を与え、生に繋ぎ止める楔になっていたのだ。 トグサは、言葉や感情、表情、身体の全てで。 バトーを緩慢な死から力強く引き上げ、清冽なまでに生を意識させ、揺らぐゴーストを容赦なく義体に縛り付ける。
それは、バトーに深い安堵と温かな安らぎを与えていた。
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電脳錠に妙な細工がないことを確認したバトーは、それに手をかけ引き抜いた。 微かな電子音が、開錠を知らせる。 電脳錠を足元に投げ捨てると、カツンと乾いた音が辺りに響き、トグサが微かに身じろぎをした。
「生きてるか、相棒」 「──────お蔭様で」
コンクリの床から身を起こしたトグサは、バトーを見上げると苦笑を浮かべた。 それから、小さな声で「すまない」と謝罪した。 バトーは、それをただ、黙って見ていた。 ゆっくりと立ち上がったトグサは、己の姿の悲惨な汚れ具合に、困ったように眉を寄せるとブツブツ文句を言いながら、上着を脱いだ。 それから、茶の目が、バトーを振り返り。 真っ直ぐな視線が、義眼を捉え、ゆっくりと感情を露わにした。 悔しさと不甲斐なさに呆れ。 そして。 安堵と、困惑。 複雑な感情が浮かんでは消えた。
「旦那?」
訝しげな、トグサの声が電脳を震わせる。 否。 それだけでなく、表情、仕草、何もかもが自分を揺らす。
この男が、傷を負うことも。 触れられなくなることも。 今では、考えるだけで恐ろしい。
安らぎと、同時に、生まれるのは。 それらと対極の不安と焦燥。
それが、胸を焼くのだ。
それを知ってもなお、バトーはこの生身の男を手放す気にはなれなかった。 近付き、表情を伺うように見上げてくるトグサの身体を衝動的に引き寄せ、しなやかな生身の身体を抱き締める。 突然の抱擁に、トグサは抗い、抗議の言葉を口にしたが。
「俺を拒むな」
その一言で、トグサは大人しく、バトーの腕の中におさまった。 生身の身体を抱き、その腕に力を込める。 すると。 今度はトグサが反対に、バトーを抱き締めてきた。 囁くような声が人工の鼓膜を撫で、
「俺は生きてるよ」
背に回された腕が、そっと柔らかな温度を伝えてくる。 それは、触れる温度よりも熱く、バトーの身体を温めた。
「あんたの傍にいる。心配しなくていい」
その温かく、柔らかな声に。 バトーは、トグサの肩に顔を埋めると深く息を吐き出した。
B-side END → continued T-side
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