6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年09月15日(木)   鬼の守人  <九>

お久しぶりの”鬼”更新です。
前回から、ちょうど四ヶ月も経ってることに、驚愕ですよ。
はっはっは(汗)


この話の次で、一応、ラストになります。
全10話。
いい感じだなー、この、きっちり感(笑)

2月後半から始めて、やっとここまで辿り着いたーと感慨深いです。

でも、長々と書いてきましたが、ちっともお色気話にならな・・・・・orz (脱力)

まぁ、こんなこともありますよね?(訊くなっての)

ラストはもう打ち終わってるので(連休のおかげ)、直しの作業が終わり次第、アップしようと思っております。
最後まで、お付き合いいただけると、ほんとに有り難いです。


























九・契約


「どうやら、お主を呼び起こしたのは、兎草で間違いないようだな」
馬濤の言葉に、大輔は苦笑を浮かべ、孫の一人に視線を送った。
急に、名を出された兎草は、祖父の優しい目を驚きと共に見返す。
「俺が?」
解らない、と首を傾げると、馬濤が笑って答えた。
「そうさ。爺さんの言う通り、俺を起こしたのは兎草、お前だ」
「・・・ほんとに?」
「ああ。お前がせっせと俺の寝てる櫻の大樹に気を与え、そのお零れに与っていた俺が満腹になって起きちまった、という訳だな」
馬濤は、きょとんとしているトグサを見下ろし、笑った。
それに、素子が呆れたような声で言葉を投げる。
「偶然の産物、というわけね?幸か不幸か」
「まぁ、そうなるな。幸か不幸か」
同じ言葉を繰り返し、馬濤はニヤリと笑い返した。
その馬濤の表情に。
「小さい頃に、言っておくんだったわ。何でもかんでも、癒したりするんじゃないって」
素子は苦笑を浮かべ、直ぐ傍で蹲っている防摩の柔らかな毛並みを撫でた。
何でもかんでも、癒したつもりは、兎草にはない。
なにせ、自分の意のままに操れる力じゃないのだから。
「・・・・・・・・」
兎草は、何か言い返そうと思ったが、結局、何も言おうとはしなかった。
それは、姉に逆らうとどうなるか、身にしみて知っている弟の処世術でもあった。
「そうなると。お祖父さま、この男、どうしたらいいのかしら」
そこらに放り投げていいものでもないし。
素子はそう言って、大輔を返り見た。
大輔は、馬濤を見、次いで、兎草に視線を据えた。
「さて、どうしたものか」
≪ねぇねぇ、家長≫
≪この人、此処に居てもらおうよ〜≫
≪僕たち、もっとこの人から、お話聴きたいー≫
黙して長考する大輔の周りをかしましく紅と蒼の光が飛び回る。
「淵駒、断駒、静かになさい」
素子が、二つの光をたしなめる様を眺めながら、兎草はただ、事の成り行きを見守っていた。

自分の力で、解き放った、鬼喰いと異名を持つ霊体。
畏れと親しみを抱かせる男。

淵駒や断駒のように、無邪気に、ここに馬濤を置いて欲しい。
そう言いたい気持ちと。
そう、言ってはいけない気持ち。
先程のように、対極の意志がまた、兎草の内で生まれている。

どうしたら、いいのか。

戸惑いの中、兎草は黙ってそこに佇んでいた。
すると、馬濤の暢気な声が、
「なぁ。俺が、兎草の守護に憑くってのは、どうだ?」
そう提案してきたのだった。
「────え」
その言葉に、兎草は驚きで目を見開き、傍らを見上げた。
馬濤はといえば、自分の考えが最上だ、とでも言わんばかりの表情で大輔や素子達を見ている。
「ここから解き放つのが心配で、どうしたらいいのかと考えるなら。兎草が俺を傍に置いておけばいいじゃねえか」
突然の提案に、大輔は眉間を寄せ、素子はといえば、呆れたように口を開けていた。
馬濤は、次いで、兎草を見下ろし、
「どうだ、兎草?」
そう言って、お伺いを立ててきた。
兎草は、それに答えることも出来ず、ただ馬濤を見上げるしかない。
その真っ直ぐに自分を見上げる視線を隠された目で受けながら、
「俺が傍に居て、お前を護り、生かしてやる。代わりに、兎草、お前は俺に気を喰わせてくれればいい」
「・・・・・」
「守護に憑く、とは言ったが。庇護者や守護者のような一方的なもんじゃねえ。これは謂わば、対等の関係だ」
対等、その言葉に、兎草の気持ちが揺れた。
馬濤は言葉を続ける。
「俺はお前から気を貰う代わりに、何者からも守護してやる。お前は、俺に気を与え生かす。これって、対等じゃねえか?どうだ?そういう契約をしねえか」
俯き、考える兎草の姿に口の端を引き上げた馬濤は、再び、正面に陣取る肉親である二人の術者を見遣った。
「家長殿、姉上殿、どうだろう、この契約、お許し願えるだろうか?」
その言葉は、兎草の鼓膜を優しく撫でた。


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武藤なむ