6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年09月11日(日)   ��題 「言わぬが花、秘すれば花」

��題の第二弾。
Gさんから頂いたお題「タチコマがミテタ」です。

裏仕様、かつ、バトグサの濡れ場(笑)とタチコマを絡める・・・という難しいお題でしたが。
愉しんで、書けました。
ええ、ものっそ、愉しんで書きましたとも。 ←欲望に素直な大人がココに


・・・でも、あの、なにやら、かるくスン止め劇場な仕上がりで(汗)


濡れ場が中途半端なことをお許しくださいませ(土下座)

Gさん、ごめんね・・・orz
私、まだ、ピュアな部分が残ってるみた(強制遮断)

バトグサ分がちょっと少ない上に、仕上がったらイシモトになってた罠も発動・・・。
でも、Gさんに萌えを感じてもらえたら、いいなぁと思って書きました。

どうぞ、お納めくださいませ。



Gさん、狩られてくれて、ありがとうございました(笑)
そして、素敵なお題をありがとうございました!!
















「旦那、なんの冗談だよ?」

茶の髪の男が、やや焦ったような声で、背後の男を返り見る。
”旦那”と呼ばれた背後の男は、義眼の大男だ。
後ろから伸びてきた義眼の男の手を必死に剥ぎ取ろうとしているようだが、成果は上がらないようで。
その手は、茶の髪を指に絡ませ、次いで男の首筋を撫でるときっちりと締められたネクタイを解きにかかった。
椅子に腰掛けたまま、覆い被さるように抱き込まれている為、逃げようにも逃げられない男が非難の声を上げる。

「いい加減に、よせよ。冗談は」
「冗談?」

男の低音が、笑い含みに応える。

「何でそう思う、トグサ」

トグサと呼ばれた男は、眉間に皺を寄せると、不機嫌に答えた。

「冗談じゃなきゃ、何なんだよ、この手は。任務中だぜ?」
「本気の証、と言ったら?」
「───────あんたなぁ・・・」

”本気”の言葉に呆れ声になった男が、大きな溜息を吐いた。
この男達は、何かの任務の真っ最中であるらしい。

「専従捜査だからって、気ぃ抜いてんのか?」
「抜いちゃあいねぇよ」
「じゃあ、この手は止めてくれるんだろうな?」

ネクタイを抜き取ろうとする、大きな手を力を込めて握る。
その手の主は、悪戯を咎められ不貞腐れたような、子供のような言い方をした。

「お前が、そんな格好してるのが悪い」
「そんな格好??普通のスーツだろうが。いつもの格好と変わんねえよ」
「いつものは、やぼったすぎる」
「うるせえ。俺は、あれが楽で好きなの」

茶の髪の男は、義眼の男の言い分に、顔を顰めた。
義眼の男の行動の原因は、ちょっとした”変化”のせいらしい。

「黒のスーツに白のシャツ、ネクタイ、革靴。手入れの行き届いた髪。企業に入るにはこれが一番、馴染むんだろうが」
「悪いかよ」
「バカだねぇ、お前は。悪くねえから、こうなってんだろうよ?」
「はぁ?馬鹿はあんただろー??」

呆れるを通り越してしまったのか、茶の髪の男は、義眼の男の腕の中で笑い出した。



────────────────────────



『ねぇねぇ。これって、性交渉ってやつでしょ?』
『普通は男女間のものだけどね』
『義体化が進んだ現在では、性ってものは有って無きがものなんだよ』
『”ボーダレス”かつ”セクサレス”ってやつだね』
『そう!故に男同士、女同士の性交渉ってものもあるのさ』
『へえ、そうなんだー』
『こうなってくると、人間の種の存続って、大変になるねー』

オレンジの光の渦巻く空間に、青い光たちが集まって円形を描いている。

『でも、意外だなぁ。バトーさんとトグサ君が、そういう関係だったっていうのは』
『そうだねぇ』
『確かにぃー』
『トグサ君には、奥さんがいるものねぇ』
『どうして、バトーさんと性交渉するんだろう?』
『ううん?どうしてだろうね』
『牡の、種の保存に対する本能的な強い欲求?』
『だったら、牝とするじゃないかー』
『じゃあ、なに?』
『ううん、一概には言えないけど』
『けど?』
『相手を征服したいという闘争的思考か、支配欲か』

青い光たちは、わやわやと身を揺らしながら。
喧々諤々、論じている。

『でも、バトーさんはそういう人ではないよねー?』
『トグサ君も大人しく従うような人じゃないし』
『もしくは、たんなる好意。もしくは、愛とかいう感情かなー?』
『ううんー??』
『これだから、人間の感情というのは、一概に語れないんだよね』
『そうそう、とっても難しいものなのさ』
『特に、僕達みたいなAIにはね』
『神は永遠に幾何学する、ってことかなぁ?』
『僕たちがゴーストを獲得したかどうかが、難しいのも、そこにあるのかもしれないね』

答えを見出せないまま、青い光たちは広大な電子の空間を漂っていた。
よもや、そんなところで己たちの性交渉のなんたるかが語られているとは、二人の男たちは思うまい。
と、そこに彼らを呼ぶ声が響いた。

『────────タチコマ』

青い光、彼らを呼ぶ。
女の声。
深く、この空間を満たすように、硬質の声がする。

『この声は』
『まさしく』
『 『 『 『 『  少  佐  〜 〜 〜 〜  』 』 』 』 』 

タチコマ達は一斉にその女を呼んだ。
思考戦車である彼らの、いわば、飼い主とでも言おうか。
女は、少しの揺らぎも無い声で、タチコマ達に話しかけてくる。

『こういう時はな、見ても聞いても、知らぬ振りをするのが通常だ』

命を預けることの出来る同僚達の濡れ場も。
女にとっては、然したる問題ではないらしい。

『あいつらに、どうしてなどと、訊くんじゃないぞ』

その言葉に、タチコマたちは不平の大合唱になる。

『ええええ、でもぉ〜〜』
『経験値、上げたいですぅ〜〜』
『だってだって、知りたいんだもぉん』
『ねぇん、少佐ぁ、少しなら訊いてもいいでしょぉー??』

機械たちの激しい抵抗。
ゴーストを手に入れているかのような、その反応に女の笑う気配が辺りに満ちた。
この機械たちの好奇心は、限度を知らない。
予想通りのその反応に、女は笑いを収め溜息を吐くと、電脳空間の青い集団にきっぱりと宣告した。

『モニタリングは禁止事項だったはずだな?』

タチコマたちが、二人の乗っている偽装バン、そこに搭載されている装置から、モニタリングしていたことを女は断罪した。
その声が、微笑を含みながらも硬度を増す。
それに、機械であるはずのタチコマ達は反応した。
ヒトの様に。
”恐怖”という感情を理解したかの様に。

『はあい、そうですー』
『ごめんなさい、少佐ぁ・・・・』
『ちょっとした、出来心ってやつですー』

この機械たちにとって、そう、この女は神にも匹敵する存在なのだ。
それ故に、彼らは従い、沈黙するしかないのである。

『僕たち、ラボ送りになるのーー??』

ざわめく青い光たちに女は、

『ラボ送りになどしない』

そう応えた。

『わぁあい、ヨカッタねえ〜!』
『良かった、良かったねぇ♪』

機体の揺れる音が聴こえてきそうな、彼らの映像の動きに、女は笑みを浮かべ。

『───が、彼らを数時間に及び観察した記録はお前達から削除する』

しかし、容赦のない決定を下した。

『 『 『 『 『 え え   え  ぇ え エ ェ  え え え え ! ! ! ! ! ! 』 』 』 』 』 
『そんなぁ、少佐!ゴムタイなぁあーーーー』
『それだけは、ご勘弁をお代官様ぁ〜〜〜〜』

わらわらと右往左往しだす彼らに、女は徹底的に許可を与えなかった。

『全て、洗いざらい消去だ』
『 『 『  ひ ぃ え ぇ ェ え エ ー ー ー  』 』 』

叫びながら、慌てふためくタチコマに、女は言った。
その声には、少しだけ、柔らかさが混じっていたのだが。
青い彼らは、気付かなかった。

『言わぬが花と言うのよ、人は、それをね』

そして、その言葉が溶けてなくなるのと、同調するかのように。
女の声が消え。
そして。
電脳空間から、青い集団も姿を消した。



────────────────────────



女は、宣告通り、タチコマ達の数時間の記録を削除した。
『言わぬが花というのよ、お前達』
その言葉以外は。

彼らの秘め事が。
誰の目にも、誰の電脳にも触れぬように。
永遠に、触れられることのない場所へ。

女は、彼らの囁きを思い出して、笑む。


いつも張り詰めたような、繊細な心を持つ義眼の男の安らいだ声。
生身の身体そのままに柔らかで、しかし強靭な色を隠す男の温かな甘い声。


こういう関係があっても、いいじゃない。
女は許容した。
彼らの行為が、何重もの罪を負っていても。
それでも、許せると思った。



────────────────────────



「秘すれば花、とも言うかしら?」

電脳で囁いたはずのその言葉は、音声になって零れ落ちていた。
女の愉しげな声。
ダイブ装置に収まったままのイシカワが、それに反応した。
首に繋がっている装置を外し、

「どうした、少佐?」

傍らに立つ女に視線を向け、片眉を吊り上げた。
流れ落ちるデータを共に視ていたはずの女の言葉とは思えなかったからだ。
その渋く重い声は、自分がダイブルームで情報を洗い出している最中であったことを女、草薙に思い出させた。
薄暗いダイブルーム、装置のシートに手を掛け、モニターを覗き込んでいた身体に意識を繋げる。

「───ああ、すまない、イシカワ」

ここの主とも言える男に視線を落し、謝罪すると、

「いや、それは構わん。俺はお前の手足だからなぁ。文句なぞあろうはずがねぇ」

顎鬚を撫でながら、イシカワが口の端を引き上げた。
気心の知れた昔からの戦友の癖のある笑いに、草薙は笑みを返す。

「それよりも、今の言葉は何だ?そっちのが気になる。いきなり、黙り込みやがったかと思ったら、”秘すれば花”ときた」
「あら、聞えてた?」

唇が美しい弧を描く。

「ああ、しっかりな」

その、人を惹きつけてやまない笑みに含みを読み取り、イシカワは片眉を上げた。
草薙の、こんな表情は、珍しい。

「何か、面白いことでもあったか?」

その言葉に、草薙は目を伏せた。
しかし、それでイシカワが引き下がることはなかった。
女の声には、拒絶の気配が感じられなかったからだ。

「で?」

草薙は、イシカワの視線を真っ直ぐに受けると口を開いた。

「うちの好奇心の塊達が、オイタをしてたのよ」
「オイタだぁあ?」

頓狂なイシカワの声に、くすくすと笑いながら草薙は言葉を続ける。

「だから、ちょっとお仕置きを、ね」

それで大体の事情を察したイシカワは、頭の後ろで手を組むとシートに背を預け、草薙を見上げた。

「ふふん、そいつは、おっかないねぇ」

言葉を次ぐ。

「で?どんなオイタをしてたんだ、うちの思考戦車どもは」
「ふふ・・・それは”秘すれば花”よ。イシカワ」

そこには、拒絶の色を纏った微笑があった。

「さいで」

草薙のその笑みに、イシカワは眼を眇め、追求をするのを諦めた。
もう、口を開かないと長年の経験で理解したからだ。

「じゃぁ、オレは、情報の海に戻るとするぜ。隊長殿」

重厚な装置を再び首に繋げたイシカワに、草薙は頷いた。

「頼むわ、イシカワ」

その唇には、花の様な微笑が宿っている。



────────────────────────



彼らの秘め事は、誰も知らない。
永遠の彼方へ、消えた。


言わぬが花。
秘すれば花。


ただ一人。
その花を支配する女だけが。
すべてを識って。
そして、黙するのだ。







END


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武藤なむ