6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年06月21日(火)   常世 ─連鎖─  「常世、散る花、その姿」 ��

一度にアップしようと思いましたが、分割。

バトグサに見せかけて、モトグサちっくな罠。
・・・・・・どうなの?(汗)

ほんとは、もっとバトグサ的にしたかったんですが。
書いてるうちに、こんなことになった。
・・・・・・どうでしょうか、缶さん??(訊くなよ)








































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少しだけ欠けた、いつもの日常の中、任務をこなし。
彼女のいない穴を必死に埋めようとした。
皆が、それぞれの方法で。
出来る限りの力で。



書類整理が一段落したトグサは、ふらりと屋上に足を向けた。
雲一つない晴天の中、フェンスに肘をつき、眼下を見下ろす。
増殖し続ける都市の姿をただ眺め、その眩しさに目を眇める。
と、背後から、聞き慣れた女の声がトグサの名を呼んだ。

「トグサ」

少し低い、けれど柔らかい、彼女の声。
待ち望んだ声だ。
トグサは振り返り、草薙の姿をその目に捉えた。
「───少佐・・・もう、動いても?」
そこには、以前と変わらぬ、美しい姿があった。
じんわりとした、実感がトグサを撫でる。
「本当なら三日でも、良かったんだけれど。課長に止められてね。無駄に休んでしまったわ」
紅い瞳が細められ、唇が笑みを浮かべて、トグサを見た。
「おかえりなさい」
何とか紡ぎだしたその言葉に、草薙は微笑むと、頷いた。



トグサの寄り掛かったフェンスを草薙は軽く飛び越えると、ビルの際に立ち、吹き上げる風にその身をなぶらせた。
紫の髪が、その風に揺れる。
「本当に、動いても大丈夫そうですね、少佐。安心しました」
一連の動きに、まったく隙は無く。
トグサは、そう言って、草薙の背を眺めた。
すると、草薙は肩越しに振り返り。
「まるで、生きた人形ね」
囁くようにそう言い、以前と変わらぬ美しい唇に笑みをのせた。

「あれほど、死に近づいても。この身は死を受け入れない」

紅い瞳は、トグサから離れ。
拡がり続ける眼下の景色に向けられた。
そこには、僅かばかりの自嘲の色が含まれていた。

トグサは、それを敏感に感じ取り、確実に捉えてしまった。

常、隠し続けられているであろう、感情の一端。
草薙の素の顔。
それは、剥き出しのゴーストが揺らぐ姿。

胸に抜けない棘が刺さり、深く抉られるようだ。

聴きたくない。
見たくない。
そんな言葉も、表情も、似合わない。

「違う!」

トグサは、こちらを見なくなった草薙に向かって、叫んだ。
口に出さなければ、泣いていたかもしれない。
あの日、飲み込んだ叫びが溢れて、トグサの咽喉を詰まらせた。

「──────違います。生きている、人間だ、貴方は」

情けなく掠れていく声で、

「義体であろうと、何であろうと、少佐は生きてる」

トグサのゴーストは叫んだ。

「人形だなんて、言わないで下さい。少佐には・・・似合わない」

彼女の内に、弱く柔らかな部分があると解っているのに。
強くあって欲しいと願ってしまう。
これは、エゴだ。
生身であり続ける自分の、義体である強き者への欲求。

生きて欲しい。
どんな姿になっても。
死なないで。

生きてくれ、と。

そう思ってしまう、身勝手なゴーストが、いる。
なんて、ずるい想いだろうか。
トグサは、握り締めた両手に額を押し当てた。

「悪かった」

離れていた草薙の声が、不意に、近くから聴こえた。
目を開くと、気配なく近づいていた草薙の爪先が見えた。

「お前がそういう男だから、甘えてしまうのね。私も・・・バトーも」

優しい声が、降ってくる。
トグサはかぶりを振ると、言葉を続けた。

「俺だって、貴方達の強さに、甘えてるんです。偉そうに、こんなこと、言えないんです」

トグサの消え入りそうな、微かな囁きに応えるように。
耳元で、草薙の静かな、そして温かな声がした。


「トグサ、心配してくれて、ありがとう」


柔らかな手の平が、まるで子供をあやす様に、トグサの髪を撫でた。
何度も。
何度も、慰めるように。
そして、彼女の頬が、そっとトグサの髪に触れた。
その優しい感触は、生きて、今ここに彼女がいることを教えてくれた。

これが、現実であるのだと。

現実をつれて、草薙は戻ってきたのだと。







トグサは、それを黙って受け入れた。



痛みと、安堵。

二つの心をしっかりと自分の手に、握り締めながら。
















常世とは、散る宿命。
その姿。
艶やかに、しなやかな花の如く。
咲き誇り、その後。
潔く、見事に散リ逝く。

常世とは、有限の花。
大輪の美しき、命。








END


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武藤なむ