6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年05月15日(日)   鬼の守人  <八>

ども。
お久しぶりの”鬼”でございます。
まだ、続いてました。

どこまで、逝く気なのか、自分でも判りません。


あんまり久しぶり過ぎて。
書き出すのに。
もう一度、最初っから読み直さないといけないという罠に嵌まり・・・orz
自分で自分に、羞恥プレイ(笑)
恥ずかしいやら、書き直したいやら、大変な苦行でした。

・・・・・・・・・もぅ、本当に・・・・・・・・・・笑い事じゃないから・・・orz

ノリを掴むのにも、四苦八苦☆
放置した自分が悪いんですが・・・(苦笑)

ぽんぽーんと、更新したいよ・・・。
出来ればですがね・・・・(無理だから・泣)
























八・鬼喰い


家に辿り着くと、縁側に祖父が座って待っていた。
その隣りでは、素子がお茶の用意をしている。
彼女の眷属である妖しの者達は、縁の下に身を潜め、近づいてくる兎草を心配そうに見つめていた。
自分達が護ってきた小さな子供。
その背後に在る得体の知れぬ霊体。
未だに己達の抱く不安が拭い切れぬのであろう。
ただ一匹、防摩は体が大きく縁の下には入れないので、素子の傍に寛いだ様子で蹲っていた。
「祖父さま」
大輔の気遣うような眼差しに、兎草は申し訳なさそうに頭を下げた。
囁くように、ごめんなさいと謝罪の言葉を口にする。
すると、もういいと優しい声がした。
「素子から話は訊いた」
祖父・大輔の深い声が闇に融けた。
「結界が軋む音がしたので何事かと思っておったが。なるほど、これほどの者ではな」
結界の創り手である大輔には、異常がいち早く察知できたことだろう。
「破られぬだけ、ましであった」
「でも、祖父さま、馬濤は」
自分の結界を揺るがした者を鋭く切り裂くような視線で視る大輔に、兎草は慌てて口を挟んだ。
「馬濤は・・・」
何か言いたかったが、うまく言葉にならない。
この霊体は、大輔と同じような考えを持っているのだ。
無下に祓ったりして欲しくなかった。
恐ろしいだけの者でないのだと、優しく笑うのだということを伝えたいのだが、気だけが急いて言葉に出来ない。
もどかしい自分に、地団駄を踏みたい気持ちでいると。

ぽう、と。

花開くように、宙に蒼い真円の光と紅い楕円の光が現れた。
時を稼いでくれる様に。
現れた二つの光は、大輔の肩の辺りを浮遊している。
その光から、楽しそうな子供の声が聞こえてきた。
≪鬼喰い≫
蒼い光が、瞬きながら、驚きの声をあげる。
≪この人、鬼喰いだ≫
それに、大輔は眉間を寄せた。
素子の注いでくれた番茶を一口啜ると、確認するように問う。
「断駒、淵駒。間違いないか?」
大輔の眷属の中でも、最も特殊な存在、純粋な力の塊である断駒と淵駒がきゃぁきゃぁと舞う。
≪間違いないですよ、家長≫
紅い光、淵駒がふよふよと風にそよぐ様に移動しながら言うとすかさず蒼い光の断駒が言葉を次ぐ。
≪間違いないよねぇ、淵≫
≪間違いないよ、ねぇ、断≫
その声は、無邪気に楽しそうであった。
それに、断駒が続ける。
≪前世で悪業の限りを尽くして”鬼”と成り、輪廻の環から堕ちた者≫
≪肉を亡くし、魂のみで此の世にある者≫
二つの声が重なり、響き合う。
≪そして、数多いる鬼の輩を≫
≪屈伏させる者≫
≪屠る者≫
≪鬼喰い≫

「──────鬼喰い?」

兎草は、男を見上げると掠れる声で呟いた。
馬濤の凄まじい力に付けられた、その異名。
垣間見た、力を思い出し、兎草の心がすぅと冷える。
そんな兎草の声に、馬濤は素っ気なく答えた。
「そんな風に呼ばれることも在ったが、別に好きで喰ってた訳じゃねぇぞ?」
困ったように言うその口許は、兎草の声の中に含まれた、少しの畏れを感じ取ったようだった。
それは、兎草に畏れを抱かれるのが、心外だし困るとでもいう様な表情である。
しかし、兎草には、その表情が見えなかった。
≪そうなのー?≫
≪じゃあ、どうして、喰べたの??≫
無邪気な声は、兎草の変化など知らぬ気に、馬濤に問う。
周囲を浮遊しだした紅と蒼の光に、頭を掻きながら、
「俺は、生きてる間に人を殺した。それこそ、数え切れんくらいな」
けろりと、馬濤は凄まじいことを口にした。
≪へぇ〜≫
≪それは凄いねぇー≫
「時代だったといえば、それまでかもしれんが・・・だから、殺すということに、飽いた。死んでまで、する気はなかった」
馬濤は、昔を思い出すように目を覆う布を指先で撫でた。
現在から、どれほど遠くの過去なのか。
兎草には、見当もつかなかった。
「だが、振りかかる火の粉は払わねえと俺が喰われる。そいつは御免だ。だから、喰った。それだけのこと。そんなことを繰り返してるうちに、いつの間にか鬼喰いだのなんだのと名がついた」
「お前さんは、何故、この木に宿っていた?」
静かに話を聴いていた大輔は、そこで初めて問い掛けた。
鬼喰いと呼ばれた男を恐れ気もなく、真っ直ぐに見据えて。
「飽いた」
馬濤は答えた。
「何に?」
更に、問う。
「奴らの相手をすることにさ。言ったろ?死んでまで、殺し合いなぞしたかねえと。俺は戦うのは好きだったが、人を殺すのは嫌ぇだった。死んでからも、その気持ちに変わりはねえ。しかし、輪廻に入れねえ俺は、ぼーっとしてると無に堕ちる。こうなっても、生きるには”気”が必要でな」
馬濤は、無造作に顔に掛かる白髪を掻きあげた。
「消滅するのも、まあアリだが。ぼーっとして消えるのは、つまらん。」
「ほう」
「そんな時、見事に咲き散る、櫻の大樹に逢った。俺はこいつに気を分けて貰いながら、寝ることに決めたのさ」
馬濤はそう言って、苦笑のような、自嘲のような笑みを浮かべた。

「消えてもいいと、思えるような”何か”に逢うまでな」

大輔はそんな馬濤をただ静かに見ている。
祓う、という気はないようであった。
二人の問答を大人しく聴いていた兎草は、それに気付いて、ほっと安堵の息を漏らした。
冷えていた心は、馬濤の言葉を聴いているうちに、溶けていた。
不思議な気分で、兎草は隣に立つ男を見上げる。

馬濤を畏れる気持ち。
そして、慕わしいと思う気持ち。

両極のような気持ちが、兎草の中に生まれて、せめぎあっている。
その、どちらもが、あるべき感情だと。
心の奥から、囁く声がする。

兎草の心にある二つの感情。

それは、徐々に、けれども確実に。
一つに混じっていくような気が、兎草にはしていた。


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武藤なむ