ども、まだまだ続く気配の裏パラ。 鬼の<六>です。
これで、9課の実行部隊は出揃いました。 トグサ君と少佐以外、みんな人じゃなくて、御免なさい・・・orz 元・人とか妖怪とか・・・・・・。 もう、好き勝手です。
ほんと、すいません。 でも、楽しいです。(おいおい)
六・その女
男が名乗りをあげたその時。 暗闇を裂くかのような女の声がした。 「兎草!!」 凛と響くその女の声に、その場にいた者達の意識が向かう。 「姉さん」 兎草は、駆けてくる姉の姿をその視界におさめた。 すらりとした肢体の、美しい、強い意志を宿す瞳をもった女。 それが兎草の姉、素子だ。 素子の足元には、犀灯が。 そして。 その後ろから、もう一匹、大きな白い塊が駆けて来るのが見えた。 眼と目元が朱色、白い毛の、犬のような獅子のような姿の獣だ。 「防摩、お行き」 素子の声に、白い長毛をなびかせ、防摩が男の背後に身を躍らせた。
男・馬濤は、悠然とそれを見、それから視線を兎草に落とし、 「この別嬪さん、お前の姉上様か?お前と同じ、良い眼をしてる」 そう言って、口の端を引き上げた。 「見える、のか?馬濤」 訊いておいて、兎草は間抜けた質問だったと思った。 相手は、元・人間であって、今は霊なのだ。 見えるとか、見えないとかの問題じゃない。 しかし、それに馬濤はちゃんと答えを返した。 「ん?ああ、この目で、という事か。この目では、もうモノは見えねぇ。が、感じる」 それから、にっと笑って兎草を見下ろす。 「お前の顔もちゃんと見えてるさ。この髪の色も、目の色も、いいな」 馬濤は、少し長い兎草の茶の髪を一房つかんで、笑みを深くした。 先程までの恐ろしい緊迫感が、音を立てて崩れたように感じた兎草は。 困ったように馬濤を見上げ、それから、居心地の悪さを感じ身を竦めた。
ぐったりと横たわっていた狐が、主の存在を感じて、身動ぎした。 [も、素子・・・] 「──────波厨」 頭をもたげ動こうとする波厨に、膝をついた素子は手を伸ばし、それを制した。 [すま、ない・・・] 波厨の謝罪の言葉に、素子は首を振る。 「わかっている、もういい。動かず、大人しくしていろ」 その波厨に寄り添うように犀灯は立つと、投げ出された前脚を気遣わしげに舐めた。 [大丈夫か?] [何とか、な] 狐の口許が、皮肉気に歪んだ。 自分の配下の妖しの者の無事を確認すると素子は、すっくと立ち上がり、己の弟の傍に立つ大柄な霊体に鋭い視線を向けた。 声には、隠し切れない冷気が滲んでいる。 「───お前、どうして此処にいる?此処には、結界があったはずだ」 馬濤は、それに頭を掻いた。 「俺は最初から此処にいたぜ?この櫻が、おれの依り代だった。いつからかは俺も知らねえから、答えようがねえ」 正直に答えてくる馬濤に、少し毒気を抜かれたのか、素子の視線が和らいだ。 しかし、この男は未だに危険な存在である。 不確定の要素が、はっきりとした形を現すまでは。 油断をするわけにはいかないと素子は、気を引き締めた。 そんな素子に気にもとめず、今度は馬濤が問う。 「その九尾はお前さんのか?」 「──────そうよ」 「で、兎草のお守に憑けた?」 「ええ」 「俺の庇護者なんだ。波厨も犀灯も」 姉と男の遣り取りを見ていた兎草も、そう言って、素子の言葉を補った。 それに、馬濤は、 「それは、すまなかった。お前さんのもんを傷つける気はなかったんだが、寝起きで気も立ってたからよ」 そんなことを言って、頭を下げる大男に、素子の殺気は完全に消えることになった。 素子の眉間が困ったように顰められている。 きっと今、素子も。 先程、兎草が感じたもの、戸惑いの様なものを感じているに違いなかった。 「邪魔ぁされるのが、嫌いなもんでよ。つい、やっちまったんだ」 「・・・・・・・・」 「本当にすまねえ。俺はただ、こいつと話したかっただけなんだ」 戦闘モードから、いきなり引き摺り下ろされた感が否めない。 が。 こうなると、気を高ぶらせているのもバカらしい。 素子は、あっさりと殺気を手放した。 弟に、危害を加える敵ではないようだし。 主同様。 足元の二匹の配下も、攻撃に備えさせた配下も、目の前の敵だった者の態度に困惑を隠せない様だった。 やられた波厨でさえ、どうしてよいやら分からんと頭を地面にあずけている。 「取り合えず」 素子は一つ大きく息を吐くと、 「敵じゃないなら、いいわ。兎草、大丈夫ね?」 大男の隣りで、困ったような顔になっている弟に声をかけた。 それに、兎草は頷いた。 「あんた、名前は?」 「馬濤だ」 「ずっと、此処に居たのね?」 「ああ」 馬濤は暫し考えるように俯き、それから素子を見た。 「これはお前の結界か?」 それに素子は首を振った。 「いいえ。お祖父さまの結界よ」 それに頷きながら、馬濤は先程の素子の質問の答えを導き出した。 「そうか。じゃあ、それよりかは前ってことになるぜ・・・俺が櫻を依り代にしようとした時にゃ、結界なんてものはなかったからな」 明確ではなかったが、答えである馬濤のその言葉に、素子は頷く。 その口許には、呆れたような微笑が浮いていた。 律儀なのか、それとも、目醒めたばかりで状況を飲み込むための情報を欲しがっているのか。 忘れていた記憶を呼び覚まそうとしているのか。 気安い口調の、口達者な霊体に、今度こそ素子は警戒を解いた。 なにより、あの弟が大人しく傍に居るということは、力の強い霊ではあるが危険なものではないということだろう。 素子はそう解釈して、防摩を手元に呼び寄せた。 それから、素子は跪いて波厨に手を伸ばして、その肢体を優しく撫でた。 すると、波厨は元の小柄な狐に戻った。 素子は気遣うようにそっと抱きかかえると、来た道を戻り始めた。 「あんたが此処に居たこと、お祖父さまが知っていたか、訊いてみないとね」 後ろを返り見、顎でついて来いと促す。 女は、妖しの者達を引き連れ、闇の中を躊躇うことなく歩いていった。
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