ども。 やっとこ、<伍>でございます。
彼を書くのが、非常に楽しくなってまいりました。 傍若無人的に書きたいんですが、なんか、へタレ感が漂う・・・orz なんか、切ないですが。 それもありで。
可愛い兎のあんちくしょうは、ほんとに可愛いのかどうか。 疑問系になりつつありますが・・・orz これでも、可愛いつもりなんですと開き直って。 書き続けることにします。
なんだかなあ。
伍・接触
兎草の身体を覆い隠す程に変化した波厨の九尾の尾が、敵を威嚇するように揺れている。 波厨の周囲をちらちらと火の粉が舞い、被毛を黄金色に輝かせていた。 男は、目の前に現れた妖しの獣を物珍しそうに眺め、 「ほう、九尾の一族か」 と呟いた。 「お前、面白いな。今の時代の人間はこんなお守を憑けてるもんなのか?」 それから、心底、面白い。 そういう顔をして、兎草を見る。 口許しか見えないのに、男の表情は豊かだった。 男が、笑む。 その笑った顔は、恐ろしい圧倒的な霊気とは違い、とても無邪気なもので。 兎草の心の恐れを軽くした。 [この方に、近づくな] 波厨は、威嚇するように身を沈める。 それに、男は口許を歪めた。 一瞬で、無邪気な空気が消え、相手を捻じ伏せる声が響いた。 「邪魔するな、俺はこいつと話してぇんだ」 男が腕を一振りすると、風が鋭い凶器となって波厨を襲う。 男の闇色の衣がするりと肘まで落ち、引き締まった筋肉の塊のような腕が、見えた。 波厨の九尾の尾からは、炎が吐き出され、盾のように風を弾く。 しかし、風の威力は、炎の盾を裂いて。 波厨の四肢を襲った。 麦の穂色の体が、後方に吹き飛ばされる。
「波厨っ!?」
これほど簡単に、この九尾の庇護者が、打ちのめされるのを兎草は初めて見た。 幼い頃から傍にいたこの九尾の狐は、いつだって、恐ろしい者達から完璧に兎草を護ってくれた。 波厨は、高位の妖しの者だったのだ。
それをこれほどあっさりと。
恐れに、兎草の身体が強張る。 波厨を助けに行きたい。 もし、波厨が消失するようなことになったら・・・。 妖しの者は、力を無くすという消失で、永遠に失われる。 存在する為には永遠のような永い時間を要するというのに、あまりにも、簡単に失われてしまうのだ。 早く、波厨のところに行かなくては。 そう思うのに、身体は動いてはくれなかった。 兎草のそんな心の動きを男は察したのだろう。
「心配するな、殺しちゃいない。俺はただ、お前と話してぇだけだからよ」
そう言って、笑った。 男は遮るもののなくなった兎草の前に立つと、じっと覆われた目で、兎草を舐めるように見る。 そして、男は兎草に手を伸ばす。 その男の腕が、自分に近づいてくるのを兎草は身動ぎもせずに見つめるしか出来なかった。
ひたり。
男の冷たい掌が、頬を撫で、首に掛かる。
震えるほどに恐ろしい。 それは圧倒的な強い力に対する恐怖。 そして、相手を知らぬという未知のものへの恐怖でもあった。 しかし、恐ろしさを忘れる、そんな瞬間もあったのだ。 確かに。 兎草に見せた、あの男の笑顔がそうだった。
だから、知りたいと思った。 男のことを。 恐れを感じながらも。
そして。 この男が、自分を知っていると言った意味も。 何故なのか、知りたい。
男の大きな手が、指が、兎草の首筋を撫で。 ざわりと背筋が震えた。 けれど、この男からは害意を感じなかった。 先程の総てを圧倒するほどの気も、今は静寂の内に沈み込んでいる。
「お前、名前は」
それに兎草は、躊躇うことなく答えた。 今は、恐ろしくはない。 この男は、けっして自分に危害は加えない。 そんな、確信のようなものが、兎草の内に芽生えていたからだ。
「兎草─────お前は、誰だ?俺は、お前を知らない」
「俺か?」
男は嬉しそうに、兎草の問いに言葉を返した。
「馬濤。馬濤だ、兎草」
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