| 2013年04月02日(火) |
奄美大島の旅2 (忘れないうちにいそいでメモ) |
【3月27日】
7:30に目が覚める。
雨。
昨夜 話した いろいろなこと
自分のこと 世界のこと
布団の中 浮かんでは消える。
カラダの真ん中に こっそりかくれている もうひとりの自分が 外にでたがっている感じがする。
このところずっと その感覚があって 島にきてから さらに強くある。
金沢から仙台と移り住んで 20歳すぎに関西にやってきてから なかなか外に だせてあげられていないなあ…と 内側の奴のことを いとおしく思う。
お酒が残っていて カラダがずっしりと 重たい。
全身を清めたくて 窓を全開にする。
風が強くて 何か 話しかけてくるよう。
耳をすましているうちに 雨がふきこんで 畳がどんどん ぬれていく。
名瀬は 周りを山に囲まれているので 窓をあけると 山と話せる感じがして 安心だ。
やっぱりわたしは 山が近くにみえる 町に住みたいなあと思う。
きょうは 12時着の飛行機で まやさんがやってくる。
12時までに空港に行くには 何時に名瀬をでたらいいんだろう。
考えようとしても お酒がとぷんとぷんと 頭の中でゆれるだけで 時間の計算ができない。
そうだ こういうときは 珈琲をいれよう!
宿のおかあさんに 電気ケトルを借りてきて お湯をわかす。
最近 珈琲焙煎にこっていて 自分で焙煎した 珈琲豆をもってきたのだ。
旅のために買った 小さいアウトドア用の 豆をひくやつで がりがり豆をひいて 珈琲をいれる。
いい香り。
すこしずつ 目が覚めてくる。
そうだ。 まずは ユタ神様に電話をしなければ。
それによって これからの スケジュールが かわる。
でも こんな 二日酔いのけがれた状態で ユタ神様に電話なぞ してよいだろうか。
電話することを おもうと だんだん 緊張してくる。
せめても 清めようと
もういちど窓辺で 雨風にあたり
顔をあらって 歯をみがいて 服を着替えて
いよいよ 電話をする。
呼び出し音がなって 間もなく しっかりしたおじいちゃんの声。
「はい」
「あの…わたし、大阪からきたんですけど 先生のこと紹介してもらって… お会いしたいのですけど。 今日か明日の午前に お会いできないでしょうか。」
「1時半はどお」
「12時に友だちが空港にくるので、 それからなので、できたら3時以降がありがたいんですけど」
「3時は人がくるから…空港から40分よ」
「うーん…(できればお昼たべてからがいいんだけどなあ でも貴重な機会だしなあ…) …じゃあ…1時半でがんばってみます!」
「あ、4時でもいいよ」
「4時がありがたいです!おねがいします!」
「はいはーい」
名前も連絡先もきかれずに 電話がきれた。
ひとまず よかった。
会うことが できそうだ。
まやさんに ユタ神様に会う心構えを してもらえるようメールをして
そそくさと 宿をでる。
まずは ユタ神様にもっていくための お塩とお酒を買わなくては。
近所のストアによって 小さめの天然塩の袋を買う。
そのお隣の酒屋にいって
「ユタ神様用のお酒がほしいんですけど」
というと
「はいこれね。」
だしてきたのは 八千代の2合瓶。
「なんで30度のお酒なんですか?」
「なんでだろね。 30度で、ガラスの瓶じゃないとだめなの。 プラスチックとかじゃだめなの。」
お塩とお酒2セットをリュックにいれ 大きなおにぎりを朝ごはんに買って
空港行きのバスにのる。
バスの中で ユタ神様に ききたいことを メモする。
・カラダとココロの波(体調のバランスにメンタルがふりまわされるので) ・人生で成し遂げる仕事 ・相棒(申年)
かいているうち 文字がゆらゆらして そのうち居眠りしていた。
あっという間に 気がつけば空港だ。
空港の到着ロビーは お迎えの人でにぎわっている。
レンタカーの人 おじいちゃん 若い娘 ご夫婦 … みんな誰を 待っているんだろう。
カラダをシャキンとさせたくて ミキを飲みながら わたしは まやさんを待つ。
ミキとは 奄美独特の飲み物で 芋とサトウキビを 発酵させてつくった 甘酒的だけど もっとさっぱりした味のもの。
これが また おいしいんだ。
そうしているうちに まやさんの姿がみえた。
色白で 肩くらいまでの さらさら髪。
まやさんは 心理の仲間で 飲み友だち。
わたしとは タイプが違うが
「違うよね〜」 「わかんない、なんでそう思う?」 「そう考えるんだ、おもしろーい」
と言い合える 貴重な友だち。
お酒をのむことと 山あそび 川あそび 雪あそび 自然の中であそぶことが 好きなところが 一緒だ。
さっそうと 到着口からでてきた まやさんとともに レンタカーをかりて
まずは 念願の鶏飯を 食べに行く。
わたしは 車の免許がないので 運転はまやさんに おまかせだ。
ほんに ありがたい。
わたしの旅のきっかけを つくってくれた鶏飯。
HABUSのマスターが 鶏飯屋の元祖だと おしえてくれた 「みなとや」さんへ。
海沿いのお店 天井が高くて広い店内 家族連れがひと組
みなとやの鶏飯は HABUSの鶏飯よりも 家庭料理的な感じがした。
島の人たちに 鶏飯がおいしくて 奄美に来たというと
「わざわざ外で食べるもんじゃないよー スープは鶏ガラと醤油と塩だけでできるよー」
と教えてくれたのだが
なるほど… こちらでいう 親子丼とか 天丼的な位置づけ なのではないか。
それにしても 二日酔いのわたしのカラダに しみいる鶏スープのうまさ。
「うまい!」 「うまいねえ!」
ふたりして もりもり おかわりしながら 食べる。
外は雨。
今は2時。
ユタ神様のところまでは 1時間あれば充分ゆける。
中途半端に 時間がある。
「どこにいこうか?雨やしね。 美術館いくには時間ないしねー。」
「ちょっと海沿い遠回りしていくのどお?」
とまやさん。
地図をみると ストレートに名瀬まで行く道と 半島の海沿いのくねくね道を 回って行く道がある。
「いいねーそうしよう!」
地図を眺めていると その半島の道の途中に 今井岬という 海が美しそうな岬があり そこに神社のマークがあった。
「ここに神社があるよー」
「ちょっと岬によってお参りしていこっか!」
「そうしよう!」
そうやって 遠回りして 雨のドライブを 楽しむことになったのだ。
 みなとやさんのお会計窓口。 お会計のときだけ窓をあける。
雨は小雨になったり バケツをひっくりかえしたような 土砂降りになったり 突然雲間から太陽が照ったり
後できくと これが “奄美の春らしいお天気” なのだそうだが
とても不思議な お天気だった。
グレーの雲の下 雨にけぶる エメラルドグリーンの海も 美しい。
車をとめて 写真をとる。
間もなく 今井岬だ。
ソテツ群生地と書かれている 山道をのぼる。
道の真ん中に 小鳥がとまって
車が近付くと またとんで 道の先にとまって
「小鳥が案内してくれてるわ〜」と ふたりで笑う。
と、 山の上の方に行った時に 「今井大権現」の看板がある 砂利道がみえた。
「車で入れるかなー」
といいつつ 緑に囲まれた砂利道に入る。
道がくねーっと 曲がった時 二人同時に
「わあ!」
と声をだした。
尋常じゃない なにか 濃厚な雰囲気がある。
「なんかすごいね…。鳥肌たってきた」 「なんか勝手に笑ってしまうーなにこれ」
しばらく 道の奥へゆくと 突然ひらけた広場へ。
「わあ!すごい場所やね。きもちいい!」
「なんか、カラダが勝手に笑ってくる!にやけてしまう!」
両手をのばして くるくるまわったり 足をあげたくなる。
世界に まあるく 抱かれているような 不思議な気分。
さっきまで 土砂降りだった雨はやみ ときどき太陽がさす。
そこに車をとめて さらに続く 今井権現への道をのぼる。
しばらくゆくと こんもりした山のふもとに 赤い鳥居があり 石段がつづいている。

おじぎをして 鳥居をくぐり
苔むした石段を のぼる。

一段一段が 高くてすべりそうだ。
木洩れ日が 急にさして 美しい模様ができる。
突然 すぐそばの林から つがいの鳥が 飛び立つ。
人間がきたから びっくりしたんだ。
足元にやたら とかげかイモリか 茶色い太めの かわいいやつがいる。
いろんなものが 美しくて 写真を たくさんとってしまう。
石段は結構長くつづいている。
あ、空がみえてきた。
空にむかって石段をのぼると てっぺんには 小さなお宮がたっていた。
お宮の扉を そおっとあけると
中にはたくさんの鏡。 独特のにおい。
扉をあけた状態で 手をあわせ お参りする。
わたしが わたしで いられるように からっぽで いられるように
がんばる 宣言をする。
*
お参りがおわってから
「写真を撮らせてください」
といって
お参りするときに 脇においたカメラを 手に取る。
まやさんが 「写真とっていいんかなあ?」
というのと同時に わたしはカメラの電源をいれた。
いつもなら すっと レンズがとびだすカメラ
ジージーといったまま スイッチがはいらない。
「わ、写真とったらだめだって カメラうごかない」
つい さっきまで 石段をのぼりながら
パシャパシャ写真を とっていたのに。
かみさまに
「とっちゃだめだ」
といわれたような 感じがした。
そして そういうことが 起こることが まったく 不思議ではない 感じがした。
「わ、ごめんなさい」
写真をとるのは やめる。
お宮の前から 海がみえる。
風が生きているみたいに ぴゅーっとふいてくる。
風の中で おもいきり 声を だしたくなり
ちょっと うなってみる。
「そろそろいかなくちゃね」
「おりようか」
もういちど お礼をいって
石段を降りる。
茶色いトカゲたちを ふまないように 気をつけながら。
時計を見ると もう3時をとうにすぎている。
速足でおりながら カメラのスイッチを おしてみる。
石段をおりたところで さっきまで全く動かなかった レンズが動き出す。
「なおったかも!」
そうおもって 写真をとろうとするが
まったく ピントが あわない。
「やっぱりこわれちゃってる」
急いで 車にのりこんで
もう時間がないので 来た道をもどって
ストレートに ユタ神様のいる名瀬に むかうことにする。
「なんか、顔が笑ってしまうー。ふしぎー」
運転しながら ずっと笑っている、まやさん。
「二日酔いでけがれたカラダを清めてもらったみたい」
まやさんの運転で 気持ちよいくらいにスムーズに ユタ神様のおうちに到着した。
約束の4時ぴったりだ。
「なんか、いろんなことが うまいこといってるねー」
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