盆提灯を買った。
塔矢と二人で住んでいるのはマンションで、迎え火を焚くことは出来ないからだ。
持ち帰り、灯りをともしているのを見て、塔矢はもの問いた気な顔をしていたが、結局何も言わなかった。
「いや、なんか綺麗だったからさ、夏のインテリアって言うかさ」
聞かれないと逆に居心地が悪くて言い訳にもなっていないことを言う。
「確かに、綺麗だね」
家には仏壇も何も無い。双方の親も元気だ。なのに盆提灯を買うのは不自然なのに問いただしたりはしない。
ただ綺麗だと一緒に青い光を眺める。
「あ、あのさ」
思い切って言いかけた時、塔矢が口を開いた。
「ぼく達はまだまだ若造の類いだけれど、この年まで生きて来ると亡くなった方も居るよね。だからいいんじゃないか?」
その人達を忍ぶために盆提灯を灯しても良い。
そう言って塔矢は微笑んだ。
ものすごく優しい笑みだった。
「……うん」
おれは凄く自分勝手で、たった一人のために提灯を灯したけれど、確かに言われてみれば二度と会えなくなった人も多い。
その人達にはきっと帰るべき場所があるんだろうけれど、行きでも帰りでもちょっと寄り道してくれたらいいなとその顔を思い出して頷く。
親しかった人も、それほど親しく無かった人もそれでも確かにおれの人生の中に確かに存在するのだから。
「そうめん」
言いかけたのを被せるように言う。
「なんか出前取ろう。せっかくだれか来てくれるのかもなら、美味いもん食って欲しいから」
「そうだな」
でもそれならキミが奢れよと今度は普通に笑って見せる。
ああ。
ああ本当に、おれ、こいつを好きになって良かったなと思った。
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