二度目の邂逅は真っ昼間のスーパーマーケットだった。
刺身と弁当とビールと柿ピーをカゴに入れて、ああそうだせめて牛乳くらい飲まないとと乳製品コーナーに行った時、真正面からカートを押して来る進藤達に出くわしたのだ。
「よ、久しぶり!」
この前会ったばかりなのに久しぶりは無いだろうと苦笑しつつ、「買い物?」と尋ねる。
「うん。今日休みだからさ、足り無い物の買い出しに来た」
そう言う進藤達のカゴの中は野菜や果物、肉に野菜。食用油に食パン等々。しっかりとした食生活を思わせる内容だった。
「普段は近くのスーパーで済ませちゃうんだけど、ここのが安くて品が良いじゃん?」
「んー、おれはいつも惣菜類しか買わないからなあ」
聞けば進藤達は隣町に住んでいるのだと言う。
「いや、マジ安いよ。卵や牛乳なんて特に」
言ってから思い出したように、進藤は牛乳パックを二つ取り上げてカゴに入れた。
「あ? うん」
横からつんと突かれて、進藤が一緒に居た彼とおれを交互に見る。
「こいつ横山。小学校の時のダチでさ」
それから彼を指さした。
「横山、これがおれの」
「奥さんだっけ?」
「!」
心底ぎょっとしたような顔を二人がした。
「いや、ごめん違ったな。ダンナさんじゃなくて…」
カートに手をかける彼の顔が見る見る赤く、そして青くなって行く。
「進藤っ!」
「いや、おれは」
「そうそう」
やっと思い出せたおれはぼんと手を打った。
「生涯を共にする人生のパートナーだったっけ。よろしく」
「キミ、ぼくのことを何て!」
進藤にくってかかろうとするのをまあまあとなだめる。
「塔矢…アキラさんでしたっけ。あれからおれも囲碁のこと調べました。すごく有名な方だったんだなって。進藤は昔から調子乗りで馬鹿ですが、根は真面目な良い奴なんでよろしくお願いします」
そして進藤に向き直って言った。
「人を指さすなってこの間も言われてただろう。そう言う所気をつけないと捨てられるぞ」
また改めて機会を設けて会おうぜと、おれもまたうっかり買い忘れそうになった牛乳をカゴに入れる。
「何人か集めとくからちゃんと連絡入れろよ」
進藤は何故か鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしている。
「お…おう」
にこやかに笑ってその場を去ると背後で何やら揉め始めたのが解った。
振り返ると主に進藤が彼に叱られているようだった。
でもきっと大丈夫だろう。
(だってこの前ラブラブだったもんな)
おれも男でも女でも、あんな風に胸を張って人に紹介出来るパートナーが欲しい。
今の所陰も形も無いけれど、おれだってまだチャンスはあるはずだ。
そして改めて独身男を絵に描いたようなカゴの中を見てため息をつき、卵も買うかと売り場をゆっくり探したのだった。
end
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