| 2017年02月04日(土) |
(SS)チョコよりも甘い |
「なあ、“せっぷん”ってキスのことだろ?」
唐突に進藤が話しかけて来た。
「うん、そうだよ」
「で、今日は節分だったよな」
「うん」
「せっぷんと節分って似てるよな」
「え? ああ、まあそう言えばそうかな?」
確かに音は似ている。
「俺、思うんだけど節分の語源って、せっぷんじゃ無いかな」
「え…」
「節分は鰯食って鬼にマメぶつける日ってことになってるけど、本当は好きなヤツとキスをする日なんじゃねーの?」
言われた瞬間、ぼくの頭の中を節分の起源とか由来とか語源とか色々なことがめまぐるしく交差したけれど、説明するのが面倒になってそのまま否定はしなかった。
「うん、そうかもしれないね」
「じゃあ折角だから今日は一日中たっくさんキスしようぜ♪」
にっこりと笑うと進藤は逃げるヒマも与えずにぼくにいきなりキスをした。
「まずは1回目」
一日で何回出来るかなあと心底嬉しそうに笑われて訂正する気持ちは完全に消えた。
「さあ…キミ次第じゃないかな」
「じゃあおれ頑張るよ!」
目一杯福が来るように、おまえが息もつけないくらいたくさんキスをしてやるからと、その言葉通り2回目のキスは舌も差し込まれて長時間で苦しいくらいだった。
でも甘い。
家でも駅でも棋院でもカフェでも、隙を見て進藤はぼくにキスをしまくり、12時になるギリギリまでぼくの唇を貪り続けた。
「あー、節分満喫した!」
満足げな進藤に苦笑しつつ、でもぼくも一日中とても幸せだったので、以来節分はぼく達にとって『たくさんキスをする』、バレンタインよりも甘い恋人の日になったのだった。
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バレンタインみたいなタイトルですが節分SSです。
そしてこの話の見所?は、ヒカルの間違いを面倒臭いという理由でスルーしたアキラです。
付き合いが長くなるに従って「まあいいか」を覚えたアキラということで。
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