SS‐DIARY

2017年01月04日(水) (SS)この素晴らしい新年


朝目覚めると、進藤がちょうど出掛けようとしているところだった。


「どこに行くんだ? 買い物?」


お節もお雑煮も、正月に必要な物は全て用意してあるのに、まだ何か足りないものがあったのかと思ったのだ。


「え? いや、買い物じゃ…ない」

「じゃあマラソン…って格好でも無いな。なんだ、どこに行くつもりなんだ」


最近体力作りのために時々朝走っている進藤だが、それならジャージになるはずで、今のようなふらりとコンビニにでも行くような服装で在るはずがない。


「しかもこんな早朝に、ぼくに言えないようなことをしに行くつもりなのか?」

「あ、いやっ、まさかっ! ただちょっと」


ごにょごにょと言う小さな声をよくよく聞けば「ちょっとポケスト巡りして来ようかと思って」というようなことを言っている。

ああと納得する。昨年配信されたスマホのゲームを進藤はちょこちょことマメに楽しんでいるようだったからだ。


「それはどうしても元日の朝にやらなければならないようなことなのか」

「そんなこと無いけど、でもおまえと一緒の時にやるのはおまえに失礼だし、今日は初詣に行ったり色々出掛ける用が多いからやってるヒマ無いと思うし」


それでその前に少しやっておこうかと思ったのだと進藤は言いにくそうな顔で言う。


「ガキだと思ってるだろ」

「…まあ、ちょっと」

「呆れてるんだろ」

「正直少し」


でもそれよりも圧倒的に可愛いなあという思いの方が強かった。

そうか、そんなにもやりたいゲームよりもキミはぼくを優先してくれるのかと、その喜びの方が大きかった。


「別にいいよ、一緒の時にやっても」

「や、でもそれはさすがに」

「じゃあ、これからぼくも一緒に行く。それでキミの気が済むまでポケストとやらに回ればいいんじゃないか?」


詳しいゲームの内容は未だにぼくはわからないけれど、あちこちにあるゲームポイントを巡ることが必要なのだということは解っている。


「で、でもポケモン出たらおれ掴まえたくなると思うし」


そうなったら一々立ち止まって時間食うかもだしと、進藤はまだ躊躇している。


「いいよ、付き合うからゆっくりやればいい」


その代わり、ちゃんとぼくに説明しながらやってくれと言ったら進藤は、ぱっと嬉しそうな顔になった。


「解った。ついでにジム戦もやっていい?」

「?よく解らないけど、別にいいよ」

「やった! じゃあとにかく起きて温かい格好して」


本当はずっとお前と一緒にやりたかったんだとはしゃぐ進藤の顔を見ながら、ぼくは心の底から笑った。


ああ幸せだ。

なんて良い元日だ。


(キミには解らないかもしれないけれど)


例えそれがゲームだろうとゴミ捨てだろうと、キミと何かを一緒にする。それがぼくにとって一番幸せなことなんだよと思いながら。


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すみません。既に4日でぽけごーネタですが。

アキラは自分がやらなくてもヒカルがやっているのを見て楽しめるタイプ。
でも実際に始めたらものすごく真面目にやりそう。

二人が住んでいる付近のジムのポケモン、アキラの最強のラプラスとか居そうです。


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