「わ、花だ! それに星!」
誘った時は大して気乗りしなさそうだったのに、いざ二人で花火大会の会場に来てみたら、塔矢はずっと興奮しっぱなしだった。
「なんだ進藤、どうしてみんなペンライトを振ってるんだ?」
「あー、今年は参加型ってことで花火に合わせてライブみたいにペンライト振るってことになってっから」
「どうしてこんな流行の曲ばかり流れてるんだ」
「だからライブのイメージだからだろ、ってかそうでなくても毎年こんな感じだけど」
聞けば塔矢はド田舎の、ただひたすら花火だけが打ち上がるような花火大会しか見たことが無いらしいのだった。
(じゃあ確かに新鮮かも)
都内の花火は派手だし演出も凝っている。
ライブ形式って言うのはさすがにおれも初めてだったけれど、それで感動するという程では無い。
それがすぐ真隣で純粋に感動して釘付けになっているヤツがいるとつられるというか、それを見てる方が楽しいって言うか、心がうきうきと浮き立って来る。
「進藤、今の花火ハート型だったぞ!」
「ああ、変わり花火な。さっきも花とか星の花火が上がっただろ。ハートも定番なんだ」
「あ、今度のはピースマークだ、それに次のはなんだ、雪だるま?」
もう目のキラキラ具合がそこらの子どもと変わり無い。
「猫! 今の花火猫だったぞ進藤!」
たたでさえ大きな目を見開いて、はしゃぎ続ける塔矢の顔をしばらくじっと見つめた後、おれは両手で頬を挟むようにして無理矢理おれの方を向かせた。
「何するんだ! たった今仕掛け花火が始まった所だったのに」
くってかかる口を唇と舌で塞ぐ。
びっくりして限界まで目を見開く塔矢におれは笑った。
「も、解ったからちょっとぐらいおれのことも見ろって」
離れてもまだ硬直したように動かない。
「そんな可愛くしたら、頭からバリバリ食いたくなるだろ」
これでも必死で我慢してるんだからとおれが言ったら塔矢はやっとゆっくり頬を赤らめて、でも視線は意地のように富士山を形作り始めた大きな仕掛け花火の方を向く。
カワイイなあ、ああ本当にもの凄くカワイイ。
帰ったら滅茶苦茶可愛がってやろう。
ちょっとぐらい泣いたって絶対許してやらないんだ。
押し倒して、浴衣脱がして、それから足の付け根に嫌って言う程キスしてやる。
浮かれた気分でそう決心した、今年の夏初めての花火。
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花火大会の季節ですので。 花火ではしゃぐアキラです。
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