「おれとケッコンして下さいっ!」
一世一代の告白を塔矢はさも不愉快そうに眉根を寄せて聞いた後、一秒も考えること無くおれに言った。
「断る」
「なんで!」
そういう意味で付き合うようになってから10年近く、もうとうに塔矢もそういう気持ちでいるものと思ったのに思いがけない裏切りに遭って、おれは心底落ち込んだ。
「何が嫌なんだよ、また家のこととか親のこととか考えてんの?」
「違う」
「やっぱあの……男同士で結婚とか人目が気になる?」
「いや? そんなことを気にするくらいなら最初からキミを好きになんかならないよ」
そもそも同性である以前に、キミとぼくとでは色々な問題が山積みなんだからと言われて更におれは落ち込んだ。
「もしかして他に好きなヤツが出来た?」
その瞬間、塔矢の視線が一気に氷点下になる。
「キミはぼくのことをそんなにも軽薄な人間だと思っているのか」
「じゃあ、どうしておれのプロポーズ受けてくんないんだよ!」
半泣きで尋ねたら塔矢は一瞬躊躇い、それから少し拗ねたような顔になって言った。
「プロポーズは……ぼくの方からするつもりだったから」
「はあ?」
「こういうことではいつもキミに主導権を握られてしまうから、だから」
せめてプロポーズだけは自分からしたかったのだと言われて首筋が熱くなった。
「えーと、うんと、それじゃあプロポーズは」
「断るって言っただろう。ぼくの方からキミに申し込みたい。ぼくはこんな風に色々面倒で扱いにくい人間だけど、それでもキミを愛している。どうかぼくをキミの一生のパートナーに選んでは貰えないだろうか」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
こんなストレートに、こんな嬉しい言葉を言って貰ったのは初めてだったのでおれは思わず目眩を起こしそうになった。
「ダメかな?」
「ダメなわけ無いじゃん!」
「選ぶよ、選ぶ! だからどうかおれのこともおまえの一生を預ける対の相手に選んで下サイ」
そう言ったら塔矢はぱあっと赤くなった。
「おれにプロポーズ言った時は平気だったじゃんか」
「それは……気を張っていたから」
即座に反撃されるとは思わなかったと言って両手で顔を覆う。
「……もちろん断るわけが無い。有り難く受けさせて頂きます」
そして少し照れながら抱擁してキスを交わし、目出度く相互受諾となったわけだけれど、更にその後お互いが用意していた婚約指輪を巡っておれ達は激しいバトルを繰り広げることになるのだった。
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もしかしなくても同じタイトル、少なくとも同じようなネタで以前にも話を書いたような気がします。同じ物を何度食べても平気だよという方のみにお勧めです。(土下座)
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