| 2015年04月23日(木) |
(SS)春眠暁を覚えず |
どうにもこうにも疲れていた。
疲れていると判断力が低下する。
眠るつもりは無かったのに、ぼくはいつの間にかうたた寝をしてしまっていたらしい、揺さぶられてぼんやりと意識を取り戻した。
「おい、塔矢」
ああ進藤だ、そう思った時、反射的に言葉がこぼれた。
「ごめん、今夜は無理だ。疲れ過ぎていて、これじゃ何をされても感じない」
何故かしんと間が開いて、その瞬間完全に覚醒した。
「違う! 今のは―」
はっと目を開いて顔を上げると、驚愕したたくさんの目とかち合った。
どうしてそう思ってしまったのかわからないけれど、ぼくは自宅のリビングかベッドルームに居るつもりだった。でもここは居酒屋で皆で飲んでいる真っ最中だったのだ。
なんとも言えない気まずい空気の中、進藤一人が上機嫌だった。
「うん、うん、おまえここの所忙しかったもんな」
大丈夫、ちゃんと元気になってから念入りに可愛がってやるからと、ぼくの体を抱きしめながらそう言うので、そうでなくても冷え切った周囲の温度は更に数度下がったのだった。
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