SS‐DIARY

2014年11月24日(月) (SS)Your Eyes Only


「なんでおまえ、目ぇ瞑らねーの?」

ほぼ触れんばかりになっていた唇をすっと離すと、ヒカルはふて腐れたようにアキラに言った。

「フツーこういう時には目ぇ瞑るもんだろ。なんでおまえ開けたまんまなんだよ」

アキラを抱き寄せ、今、正にキスをしようとしていたヒカルは、じっと大きな目で見つめられ、気まずさにそれ以上出来なくなってしまったのである。

「…キミがどんな顔でぼくに口づけようとしているのかと思って」

アキラの答えにヒカルの顔は渋くなる。

「だったら余計に止めてくれって、どうせにやけた締まりの無い顔してんだろ」

「いや」

間近にヒカルを見つめたままアキラは即座に言った。

「ぼくの石を殺しに来る時と同じ顔をしてた」

「は?」

思いがけないことを言われてヒカルは怪訝な顔になる。

「なんだよそれ」

「そのままだよ。キミと打っていて、ぼくが優勢のはずなのに、自信満々思いついた手で仕掛けて来る。その時と同じ顔をしていた」

アキラの言葉は淡々としていて、でも聞かされたヒカルの顔は真っ赤になってしまった。

「キミ、欲望が一緒なんだね。ぼくに勝ちたいって言う欲望も、ぼくを欲しいって言う欲望も一緒なんだ」

「だったらなんだよ。そんなおれは嫌いかよ」

キスなんかしたくないって言うのかと言われたアキラの口元がふっと緩んだ。

「いや…嫌いじゃないよ」

むしろ好きだ。そういうキミだからこそ好きになったんだと言われてヒカルは更に赤くなった。

「じゃあ、まあ、問題無しってことでもう目ぇ開けてんなよ」

照れくささも手伝って、ヒカルはぶっきらぼうに言うと再びアキラに口づけようとした。

でもアキラは目を閉じない。じっとヒカルを見つめている。

「おまえさあ―」

文句を言いかけるのに今度は目元でふわりと笑ってアキラはヒカルに言い聞かせるように言った。

「さっき言っただろう? そんなキミが好きだって。だからね」

キミの顔を見ていたい。

ぼくを食らうキミを最後までしっかりと見ていたいんだと言われて、嬉しさと恥ずかしさの頂点に達したヒカルは、アキラが驚いて目をしばたかせるくらい乱暴に、アキラの唇に唇を重ね合わせたのだった。


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