体中がギシギシと痛い。
痛いと言えば受ける側になったアキラの方が遙かに負担が大きかっただろうと思うのだが、それでも動くと呻きたくなる程に節々が痛み、昨夜のことがそれ位特別だったのだとヒカルは改めて痛感した。
いつかアキラと結ばれたい。告白もしない内からヒカルはずっと思っていた。
あいつを抱きしめて思い切り深くキスをしてと、想像するだけで体中が熱くなってじっとしていられなくなったことを昨夜は本当にやってしまった。
大好きな相手の肌に触れる。それがどんなことか触れてみるまでは解らなかったし、触れてしまったら後はもう何も解らなくなってしまった。
アキラの体は綺麗でそのことにとても感動したし、今まで見たことも無い表情や聞いた事の無い声を聞いて興奮した。
(でも、そっちじゃ無いんだよなあ)
どんな本にもネットにも『する』前のことと最中と、後のことは載っていた。
リードする側がすべきこと、相手に対する思いやりや、行為の甘美さは嫌という程書かれていた。次に行う時の注意点まで書かれていたくらいだ。
でも『する』ことで、自分がどう変わってしまうかまではどこにも一行も書かれてはいなかった。
(こんな風になるなんて)
冷蔵庫からスポーツ飲料を取り出そうと屈んだ時に腰に回された腕を思い出した。
スーツを着れば肩口に爪の感触を思い出し、地下鉄の中でガラスに映った自分の顔を眺めていたら重なるように眉をしかめていたアキラの顔を思い出していた。
(苦しそうだった)
でも決して止めてくれとは言わなかった。
好きだと、愛していると囁かれた言葉は思いがけない時に脳裏に蘇り体をカッと熱くさせた。
(まるであいつがおれん中に居るみたい)
アキラを知る前の自分にはもう戻れないんだとぼんやりと思い、戻りたくなんか無いと即座に強くそう思った。
「愛してる…か」
これがそういうことなのかなと、右腕の内側についた歯の跡を撫でながらヒカルは今日一日が早く終わってまたアキラを抱きしめたいと思ったのだった。
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大体同じことを考えているわけですが、でもヒカルの方が若干甘味成分が多い感じでしょうか。
それから痛み。アキラは精神的な痛みの方が大きくて、ヒカルは肉体的な痛みの方が大きかったと、そういう感じです。
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