ふとした折に体の奥底が、ずくりと鈍く疼いた。
痛みにも似たそれは、嫌でもアキラに昨夜から今朝にかけてのことを思い出させた。
物を取ろうと手を伸ばせば腕の内側にヒカルの指の感触を覚え、俯けば耳元に吐息を感じる。
足首には握られた手の強さが蘇り、背中には這わされた舌のざらつきが残っている。
ならばいっそとじっと動かずにいれば胸の内側からしこりのような熱いものが迸りそうになった。
どうにも落ち着かないそれは、突き上げられヒカルから放たれたものが自身の中に広がって行った時の感覚によく似ていた。
焼けるような熱さが内側からじわりと自分を侵して行く。それが未だ続いているような感じなのだ。
昨夜体内に染み渡ったものがまだ残っているとは考え難い。
終わった後シャワーを浴びたし、しなくて良いと言ったのにヒカルは中まで綺麗に洗ってくれたからだ。
けれど『何か』が確かにアキラの中に残っている。
(…進藤がぼくの中に居る)
疼きに首筋を赤く染めながらアキラは静かにそう思った。
抱きしめ合い、狂ったように唇を重ねて肌を合わせた。
本来そうでは無い場所で深く繋がり、互いの熱を与え合った。その結果がこうである。
『する』ということがどういうことなのか知識と実際は天と地ほど違うとアキラは思った。
(こんなに本質から変わってしまうことだったなんて)
もう自分は元の自分には戻れない。そしてこれからも更に変わって行くのだろう。
足下が崩れる程に怖く、同時に笑い出したい程嬉しくもあった。
「天気雨…」
ぽつりと呟いた言葉はそのままアキラの気持ちを表していた。
晴れた空から降り落ちる、眩しくも美しい番狂わせの雨。
アキラは這わされた指の感触をなぞるようにのど元をゆっくりと撫でながら、ヒカルは今頃何をして何を考えているのだろうかと思ったのだった。
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またかよ←セルフツッコミ。相変わらずのお初話ですが、書いたものはいつもと違うものを書いたつもりです。←どこが(セルフツッコミ2回目)
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