まだ6月だと言うのに、週末の温度は真夏日のそれだった。
「…くっそ暑い」
額から流れ落ちる汗を拭いながらヒカルが忌々しそうに呟いた。
「梅雨もまだだってのにマジかよこの温度」
問いかけたわけでは無かったけれど、耳元で言われたアキラは苦笑したように笑って言葉を返した。
「そんなに暑いなら離れればいいじゃないか」
アキラの首筋からも背中へ汗が流れ落ちている。
八畳の寝室のダブルベッドの上で、冷房も入れずにもうずっと長いこと二人は裸で抱きしめ合っていた。
冷房を入れないのはアキラが冷房の風の冷たさを嫌うからで、でもさすがに暑さには勝てなくて窓は全開に開けてある。
風は一応吹いてはいたが生ぬるく、まともに思考が出来なくなるくらい部屋の空気は暑かった。
「キミ、暑いのは嫌いだろう」
「嫌いだよ。でもおまえは好きだから」
だから離したく無いんだと、素肌に汗を伝わらせながらヒカルが言う。
「おまえだっていい加減暑いんじゃねえ?」
「暑いね。気が遠くなりそうだ」
「だったらおまえこそ離れればいいんじゃねーの」
言葉とは裏腹にぎゅっとアキラの背に回した腕に力を入れながらヒカルが言う。
「嫌だよ」
即座にアキラが言った。
「暑いのは不快だけれどね、キミはとても心地良いから」
「なんだよ、それ」
おれのパクリかよと言ってヒカルが笑うとアキラも笑った。
壁にかけられた温度計の温度は32度。
下手したら熱中症になるのではないかという暑さの中、けれど二人は汗だくのままどうしても離れることが出来なくて、日が暮れるまでの長い時間、固く抱きしめ合っていた。
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いや、すぐに窓を閉めて冷房を入れた方がいいと思いますよ。 そして水分を補給した方がいいと思いますよ。
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