SS‐DIARY

2014年05月28日(水) (SS)微乳と巨乳の間のその後


ん…と眉根を寄せてからアキラがぽつりと名を呼んだ。

「進藤」

その時室内には和谷や伊角や越智達が居て、けれど肝心のヒカルだけが居なかった。


「おい、塔矢なんか言ってるぜ」

「進藤を呼んでいるんですよ。寝言ですから放っておけばいいでしょう」

越智が素っ気無く言ったのは、アキラが随分前から酔いつぶれて眠ってしまっていたからだった。

叩いてもゆすっても起きないので、仕方無くヒカルはアキラを連れ帰るためにタクシーを呼びに大通りまで行っていたのだ。


「…進藤」

しかしアキラは尚もヒカルを呼び続ける。

「どうする? 居ないって言えば寝てても通じるかな」

「いや、その前に寝言に返事をしてはいけないって言わないか」

「なんでだよ」

「いや、寝言に返事をすると死ぬとか死なないとか」

「はあ?」

ぼそぼそと話している間にもアキラは返事が無いのが不満なのか再びヒカルの名を呼び始めている。

「進藤…進藤」

おいどうするよ、いやどうせすぐに進藤が戻って来るんだから放っておけ等々、皆が困っていると、ちらりとアキラを見た本田がひいっと悲鳴のような声をあげた。

「なんだよ本田さん」

「泣いてる! 塔矢が泣いてる!」

驚いて見てみると、返事が無いことで悪い夢でも見ているのか、寝たままアキラがぽろぽろ涙を流しているのだった。

「和谷、おまえなんとかしろ」

「って、なんでおれ」

「おまえこの研究会の責任者だろ。だったらおまえがどうにかするべきだ」

とにかくこのままではヒカルが帰って来た時に変な誤解を招きそうだと皆に言われて和谷は渋々事態を収拾すべくアキラの側に行った。

「…進藤」

(でも返事しちゃいけねーんだよなあ)

一瞬考えた末、仕方無く放り出されているアキラの手を取ると和谷はぎゅっと握ってやった。

途端に安心したようにアキラの表情が緩んで涙が止まる。

「進藤」

嬉しそうに、にっこりと微笑んでそのまますうっと眠りに落ちた。

「よ、よかった」

全員がほっとした時だった、バタンと戸が開いてヒカルが戻って来たのだった。

「悪い遅くなっちまって。タクシー中々つかまんなくてさ…」

元気よく話していた声が途中で消える。

「なんだよ」

剣呑な視線に和谷が苛立った声で言うと、ヒカルはむうっと顔を顰めて和谷の手もとを見た。

「なんだよって、おまえこそ何やってんだよ」

(しまった!)

アキラの手を握ったままだったのを和谷は失念していたのだ。

「ちょっとさー、これ、どーゆーことだかおれにも解るように説明してくれる?」

おれが居ない間におまえら塔矢に何やってたんだよと、人を殺さんばかりの凄みのある視線と声に、和谷はもちろんその場に居た全員が死を覚悟したのだった。


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飲んで説教して飲んで寝ちゃったアキラがその後、こんなことになっていたら楽しいなという話でした。


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