| 2014年02月14日(金) |
(SS)悪因悪果天網恢々 |
うまうまと朝飯を食べていたら、目の前に座る塔矢がいきなりぼそっと言った。
「キミがあんまり、くれくれと五月蠅いので今日は朝食からバレンタインメニューにしてみた」
「は?」
「ぼくの愛情を込めたキミへのチョコレートは、その味噌汁の中」
今まさに口をつけようとしていた椀を指さして言う。
「げほっ」
「…じゃなくて、キミが口に入れたご飯の中」
「ぶっ」
「…でも無くて」
「おまえなあ」
「そのだし巻き卵の中」
「もうその手はくわねーよ、どうせどれにも入って無いんだろう」
「と思わせておいて、本当に入れた」
塔矢の言葉が終わるか終わらないかの内に口の中になんとも言えない甘さが広がった。
「うっ―」
「美味しいだろう? ゴディバだよ」
キミのために一番高い物を買って来たのだから心ゆくまで味わえと、にっこり微笑む塔矢を涙目で見つめながら、おれは出汁と卵とチョコレートの不協和音をどうやって飲み込んだらいいか真剣に考えた。
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