| 2014年01月30日(木) |
(SS)Dust chute |
「ちょっと捨ててくる」
もう必要無いからと、外のゴミ捨て場に捨てに行くつもりで部屋を出る。
外廊下を歩いてしばし、ぽつりと声をかけられた。
「捨てるんだ?」
振り返るとそこにいたのは進藤で、ゴミ袋を持っていると思ったぼくは彼の手首を握り、引いて歩いているのだった。
「もう、おれのこといらないんだ?」
寂しそうな、諦めたような声で進藤がぼくに問う。
「そんなことは―」
そこで目を覚ました。
喧嘩した夜はろくな夢を見ない。
いっそ捨ててやろうかと思うくらい腹を立てていたのは事実だが、夢の中で振り返った瞬間にそれは出来ないと思い知ってしまった。
(あんな、捨てられる犬みたいな顔してるから)
手を離す。
自分のもので無くなると思っただけで、胸の痛みに死にそうになった。
(あんな人でなしで、ろくでなしで―)
嘘ばかりついている馬鹿をそれでもぼくは心の底から愛していたから。
「…あれ? なんで?」
もう口もきかないと宣言したぼくが布団に潜り込んできたのに驚いて進藤が言う。
「おれの顔も見たくないのと違かったん?」
「…そこまでは言ってない」
「ふうん?」
でも良かった。今度こそ捨てられるかと思ったと照れ臭そうにそう言われ、ぼくは胸に痛みを覚えた。
ちらりと見た進藤の顔が、夢で見たのと同じ、捨てられる犬のようなそんな表情を浮かべていたからだ。
「捨てないよ」
ぽつりと呟いて進藤の体に腕を回す。
「手に入れるのに一体どれだけ苦労したと思っているんだ」
突き放すように言いながらぎゅっと強く抱きしめたら、進藤は苦笑のように小さく笑ってから、「ありがとう」「ごめん」とぼくの耳に囁いたのだった。
|