地方での仕事を終えて帰って来たら、進藤が体調を崩し寝込んでいた。
とは言うものの、何故か頑としてそれを隠し無理をして平静を装っていたので気づくのには少々時間がかかったのだが。
「ぼくがいないのを幸いに冷房を効かせ過ぎたんだろう」
熱が上がり立っていられなくなって、とうとう音を上げた進藤をベッドに寝かせながら叱り口調でそう言ったら、むっとした声で言い返された。
「冷房なんか入れてない。昨日から急に涼しくなったから」
どうやら窓を全開にして、裸に近い状態で寝て冷やしたらしい。
「それならそれで、どうして素直に風邪をひいたって言わないんだ」
熱を計ると39度近くある。相当苦しかっただろうに、進藤は寸前まで脂汗を流しながら普通に食事まで作ったのだ。
「だって」
子どものように口を尖らせてぼそっと呟く。
「ん?」
「…じゃんか」
「なんだ?」
「夏風邪は…」
夏風邪はバカがひくって言うじゃんかと非道く不服そうな顔で言うので笑ってしまった。
「そうだね。そして実際風呂上がりにパンツ一枚で寝たキミはあまり利口だとは言えないね」
「どうせおれはバカですよ」
むうっとふくれて背中を向ける。
(でも本当はキミは笑われることよりも、疲れて帰って来たぼくに看病させることが嫌だったんだよね?)
無理をして夕食のおかわりまでしたキミが愛しい。
「ごめん、そんなこと思っていないから」
ぼくは神妙な顔で謝ると、拗ねきった恋人の機嫌を取るために、発熱して熱い首筋にそっとキスをしたのだった。
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