徹夜碁は久しぶりだったので、明け方近くさすがにうとうとしてしまった。
心地よいけだるさの中、揺さぶられて目を開いたら驚くほど間近に進藤の顔があって、ああ夢かと思った。
「キミがすき―」
夢の中ならなんでも言えるとにっこりと微笑んでそう言って、言い終わらない内に今自分がどこに居て何をしているのか閃きのように思い出した。
「―やきを食べたいと言うならおごってやらないこともない」
苦し紛れに続けた言葉に夢でもなんでも無い進藤は困惑したように眉をひそめ、それからぶっと吹き出して言った。
「なんで寝ぼけてる時までそんなに偉そうなんだよ、おまえ」
でも、折角だから奢って貰う、今ここにいる全員が証人だからなと言われ仕方無く黙ってうなずいたけれど、いつかこんな風にうっかりと進藤に自分の本当の気持ちを打ち明けてしまいそうで、ぼくはたまらなく不安になった。
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