SS‐DIARY

2013年01月17日(木) (SS)何に不満があるというのか2


塔矢とおれは性格も生活も何もかもが一致しない。

でもおれは塔矢と居るのが好きだし、打つのはもちろん塔矢と打つのが一番楽しい。

最初はおれがひたすら追いかけて行く形だったけれど、今では竜虎と呼ばれている。

同世代で唯一対等に戦えるライバル同士なんだって。

それはおれにとって最も嬉しい言われ方だし、生涯そうでありたいと願ってる。

塔矢もきっと、心ん中ではそう考えてると思うんだよね。

これから先、何年経ってもおれ達は戦い合う。

いつだってお互いが一番の目標で、今はおれのが段位がちょっと低いけど、それもすぐに追いついてみせる。

そしていつもタイトル戦でタイトルを獲り合う仲になっていくんだ。

その頃にはきっと結婚話なんか出るようになっていて、あいつはいいトコのおぼっちゃんだから見合いなんかしちゃって、やっぱり良い家のおしとやかなお嬢様と結婚しちゃったりするんだろう。

おれはおれで、あいつにスピーチなんかやらせて、小柄で可愛い胸の大きな子と結婚するんだ。

何年かしてお互いに子持ちになって、そいつらもやっぱり碁をやったりして、今のおれ達みたいにライバルになったらいいと思う。

おれのガキはきっとおれによく似たバカで、でも塔矢の子供とは間違い無く気が合うとはずだ。

そして一生家族ぐるみで付き合って行くことになるんだろう。

親友として―。




そう思っただけで途端に非道く不愉快な気分になった。

何がいけないのか自分でもわからないけど、想像したそれに耐えられない。

(なんだこれ)

誰もが思う、理想的な関係ってヤツだと思うのに、どうしても嫌悪感と怒りが消えなかった。

焼け付くように痛くて胸が苦しくて死にそう。

とにかくおれはたぶん、塔矢の築いた家庭なんて絶対に見たくないんだと思った。



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きっとこのまま一生の付き合いになっていくんだろうなあと考えて、うっかり具体的に想像して以下同文


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