| 2013年01月16日(水) |
(SS)何に不満があるというのか |
進藤ヒカルは明るくて人懐こい性格をしている。友人も多くて楽しいことが好きだからよく人の集まりに駆り出されている。
そんな彼とぼくは性格は正反対で、一つも合う所は無いというのに、気がついたら誰よりも近い存在になっていた。
碁の方でも拮抗した存在だったから、同じ世代で対等に競えるライバル同士として竜虎と呼ばれるようになり、対として扱われることが多くなっていた。
それはきっとこれからも変わらず、年を重ねるうちに頂上でタイトルを争うようになるんだろう。
獲ったり獲られたりその繰り返しで年を取り、いつかぼく達も結婚して家庭を持ったりするんだろう。
彼は彼にお似合いの元気の良い明るい女性と結婚し、ぼくはぼくでたぶん母に似た優しい女性を選ぶと思う。
やがてそれぞれ子供が生まれ、その子供同士も仲良くなって家族ぐるみの付き合いになっていったりすることだろう。
ぼく達の子供は間違い無く碁もやっているだろうから、今のぼく達のようにライバルと呼ばれるようになるかもしれない。
そうしてぼくと彼は親友として一生切れない密接な付き合いをするのだと、ただこれだけの想像が、ぼくを死にそうな気分にさせた。
これ以上を望むまでも無く、誰もが理想だと思う形なのに、それでもぼくはどうしてか、彼と彼が築く家族を思い浮かべるだけで、バカのようにとめどなく涙を流してしまうのだった。
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自覚前の話ということで。
きっとヒカルとは一生の付き合いになるんだろうなと考えて、それをうっかり具体的に想像して死にそうになったアキラの話です。
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