SS‐DIARY

2012年09月04日(火) (SS)嵌められた感も無きにしも非ず


いきなり唐突に会いたくなってしまったら、ぼくにはもう為す術が無い。


「そんなの、会いたいってひとこと電話でもくれれば速攻で会いに来るって」

進藤はさも簡単げに言ってくれるけれど、事はそんなに簡単では無いと思う。

「だって…そんな、ぼくの我が侭でキミを呼びつけるなんてことは出来ない」
「別に我が侭じゃ無いだろ。もしおれに悪いとか思うんだったらお前が来てくれたっていいし」

いつでもどこでもどんな時でも来てくれていいよとにっこりと言う。

「そんなこと余計にダメだ、キミにだって都合があるし、それに…」
「それに?」
「そんなストーカーみたいなこと」
「おれ、おまえがおれのストーカーだったら絶賛大歓迎なんだけどなあ」

してよ、ぜひぜひストーキングしてと言うのでそのにやけただらしない顔を殴りつけたくなってしまった。

「ストーカーは犯罪だ。ぼくはキミに犯罪行為をする気は無いよ」
「おれ本人がいいって言ってんのに?」
「だってそんな執着、気持ちが悪いだろう?」
「だーかーらー」

進藤と話すと話が平行線になることが多い。

意見が合わないことがほとんどだが、今回のように彼がぼくに異様なまでに寛大過ぎるせいではないかと思ってしまう。

「どうしてキミはこんなに言ってもわからないんだ!」
「おまえこそ、どうしてこんなに言ってんのにわかんねーの?」

このクソわからずやと、その後は普通に喧嘩になってしまったのだけれど、ひとしきり罵り合った後で進藤は頭を搔きながらぽつりと言った。

「じゃーさー」

一緒に暮らせばいいんじゃんと。

「え?」
「同居したって、そりゃいつも一緒ってわけには行かないけど、会いたくなった時にいつでも一番側に居られるだろ?」

遠慮も躊躇も何もせず、ドア開けて入って来るだけでいいんじゃんと言われて目から鱗が落ちたような気持ちになった。

「でも…」
「まだ何かあるのかよ」
「そんなぼくの一方的な都合でキミに同居して貰うなんて迷惑は…」
「どうしてそこで一方的って思うかな」

相互だよ、相互、おれもおまえのことストーキングしたくなるくらいいつも会いたくてたまらないと言われ、ようやくぼくはほっとして、今回も会いたくてたまらなくて散々迷って呼び出した彼の胸に抱かれたのだった。


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ヒカルもまた自分と同じ、もしくは自分以上に好きで居てくれるという考えをおこがましいと持てないアキラの話です。


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