「ねーねー」
しばらく携帯をいじっていたと思ったら、ふいに近づいて来て進藤が後ろからぼくに抱きついた。
「なんだ? 暑いな」 「ウォーアイニーってどういう意味?」
唐突に尋ねられて持っていた麦茶のコップを落としそうになる。
「は? なんでいきなり???」 「今、ヨンハとメールで話してたらおまえに聞いてみろって言われた」 「どういう会話の流れでそういうことになったんだ」
想像もつかなくて尋ねると、んー、なんだったかなあとこれがまた曖昧で心許ない。
「メールのやり取りをしてたんだろう?」 「うん。それで………………ああ! 思い出した。好きなヤツがいるかどうかって話で、それでなんか話してたら、そのウォーなんとかをおまえに言ってみろって言われたー」 「言われたーじゃない」
ぼくはコップを床に置くと、額に手を当てて大きく息を吐いた。
高永夏は、たぶんぼくの彼への気持ちを知っていて言ったのだ。
我愛你
中国語の愛の言葉。
「…私はあなたを愛しています」 「は? いきなり何言ってんの? おまえ」
「だから、ウォーアイニーの意味がそうなんだ。私はあなたを愛しています。告白の時に使う言葉だよ」 「へー」
ほー、ふーんと、進藤は解ったのか解らなかったのか、すっとぼけた調子で繰り返す。
「そうか、愛の言葉ね…ふうん」 「キミ、遊ばれたんだよ高永夏に」 「うん、そうかも。でもいいや」 「いいのか?」 「うん」
進藤は相変わらずぼくにべったりと抱きついたまま、けろりとした口調で言った。
「別にそういう意味だとしても、おれ、何ら困ったことにはならないから」 「え―――――」
一瞬時間が止る。
「なあ…もう一回言ってやろうか?」 「いや、いい」
こんな接近した状態でそんなことを言われたらぼくは死ぬ。恥ずかしさのあまりにきっと絶対死ぬだろう。
なのにどうやら高永夏よりももっといい性格をしているらしい進藤は、ぼくが赤くなっているのに敏くも気づき、前よりもっと密着するとぼくの耳に甘い口調で囁いたのだった。
「我愛你」
おれ、おまえのこと愛してるよと。
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もう、たくさんの人に何百万回も同じようなネタで書かれてきたであろう「我愛你」(^^; 今日、ひっさしぶりに聴いたら書きたくなって書きました。
なつかしー。
そうそう、ヨンハは喋るのは苦手ですが文字では割と日本語が出来るって設定です。メールは英語とカタカナ混在メールです。
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