| 2012年08月26日(日) |
(SS)恋愛賞味期限 |
おまえのことが好き、だからそういう意味でおれと付き合って欲しいと思い切って言ったら、塔矢は黙ったままその場から去ってしまった。
その後もおれを避けるわけでは無いけれど返事は一切無くて、ああこれは遠回しな断りなんだなとおれは溜息をついて諦めた。
そのまま『友人』としてずっと付き合いを続けていたけれど、二年後のある日、棋院で会った際に唐突にぽそっと言われた。
「いいよ」 「え? 何?」
当然意味が分からずに、思わず問い返してしまったら塔矢はムッとしたようにおれを睨んで言い返した。
「ぼくもキミが好きだから、申し出を受けるって言ったんだ」
キミの告白に誠意を持って答えたのに、その態度は何だと切れられておれは混乱した。
「えっ? えっ? だってあれって、おれ…フラれたんじゃないの?」
お友達でいましょーってことだったんじゃねーのと言ったら更に怖い顔をされた。
「いつぼくがそんなことを言った。大切なことだからじっくり考えて返事をしたんじゃないか」
じっくりで二年間。
もしその間におれの気持ちが変わっていたりしたら一体こいつはどうするつもりだったんだろう。
(まあ、二年たっても全然気持ちは変わって無いけど)
それどころか百年経ってもきっと変わりはしないだろうと思う。
「それで、ぼくが答えたことに対するキミの言葉は?」 「あっ…ありがとう」 「それだけ?」 「えっと、すげえ…嬉しい…デス」
これから末永くよろしくお願いしますと言ったら塔矢は初めて笑顔になって、こちらこそよろしくとぺこりと頭を下げたのだった。
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クソ真面目の弊害っていうことで。
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